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安曇野の「YARI FLOWER FARM」が直売所 「霜が降りるまで」土曜に営業

ミューレンベルギアを収穫する田中さん

ミューレンベルギアを収穫する田中さん

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 安曇野・穂高有明で切り花専門の露地栽培を行う「YARI FLOWER FARM(ヤリフラワーファーム)」が9月30日から、毎週土曜に直売所をオープンしている。

「霜が降りるまで」毎週土曜に営業する直売所

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 2021年11月に創業。現在は2.5ヘクタールの畑で試作を含めた250種類ほどの草花を育て、そのうち150種類を主に県外へ出荷している。選花場として、畑から車で5分の距離に倉庫を借りていたが、さらに敷地内にあった築150年の古民家を改修。そのスペースを使って週1回、切り花の販売を始めた。代表の田中彰さんは「地元の皆さんに、手に取ってもらう機会、ここでこういう花を育てていることを知ってもらう機会を作りたかった」と話す。

 田中さんは高知県出身。神戸大学で経済学を専攻し、東京都内の素材メーカーに就職した。その後、ビジネスコンテストに参加し、友人と共同でNPOを設立。「当時は、世の中を俯瞰(ふかん)して事業を立案したが、人の心を動かすには自分自身が本気になれるものでないとだめだと思った」と振り返る。仕事を辞めて地元に戻った際に、家族で以前よく訪れていたという牧野植物園を再訪。同じ頃、雑誌で目にしたフラワーアーティストの作品に引かれ、花を生業にしようと決めた。

 再び上京し、生花店で2年弱働き、フローリストとしての基礎的な技術を身に付けた後、2013(平成25)年に会社を設立。「関わる人すべてを幸せに」をミッションに、都内で生花店の運営を中心に、オンラインでの販売やオフィスのリース事業などを手がけ、30人ほどのスタッフを抱える企業に成長させた。2020年6月、「ミッションの達成のためには、自分より適任がいる」と考えて退任。「一度東京から離れよう」と、2021年1月、松本に移住した。

 しばらくは何もしていなかったというが、以前の取り引き先だった花農家から声をかけてもらって畑を手伝うようになった。その後、青木村で露地栽培に取り組む農園を訪れ、「道が開けた」という。さまざまな人の助けや縁がつながり、安曇野で農地を確保して開業。月1回花が届く「ファームメンバー」も募り、ゼロからの花作りを紹介したり、畑の状況を共有したりするコミュニティーとして運営している。

 「YARI」という名は、槍ケ岳から付けた。「移住して、目標も見失い不安だった中、北アルプスを望むことで救われた。中でも槍ケ岳は特別な存在」と田中さん。今後は組織設計にも着手し、雇用環境を整えつつ、耕作地も広げていきたいという。「農業は、地域の皆さんの助けがあってこそできる。さまざまな形で恩返しをしていきたい」と笑顔を見せる。

 直売所の営業時間は土曜14時~17時。霜が降りたら今季は終了となる。営業可否など詳細はインスタグラムで知らせる。

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