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松本市美術館で夭折の画家・須藤康花さん回顧展 「光と闇」絵と詩で

銅版画を言葉と共に展示した空間

銅版画を言葉と共に展示した空間

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 闘病の末、2009(平成21)年に30歳で亡くなった画家、須藤康花さんの創作の軌跡をたどる企画展「須藤康花-光と闇の記憶-」が現在、松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-7400)で開催されている。

麻績村の風景

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 生涯に残した作品1000点余りの中から、油彩画、水彩画、銅版画など約200点を展示する。父・正親さんが2012(平成24)年に開館した「康花美術館」(北深志2)の全面的な協力の下、初の大規模回顧展が実現した。展示は8章構成で、小学生の頃に描いた家族や風景画から始まり、鉛筆や木炭を使ったデッサンや、繊細な心象風景、自画像などが並ぶ。

 康花さんは14歳で母と死別した後、幼少期に発症した自身の病と向き合い、生きることへの苦しみと葛藤の中で創作し続けた。16歳で「沼津美術研究所」に入所して本格的に絵の道へ進み、多摩美術大学では版画を研究。週末には父が暮らす麻績村で、農作業を手伝ったり、子どもたちに絵を教えたりしながら、村の暮らしや四季の風景を描いた。2007(平成19)年、同大学院修了と同じ時期にがん発症の告知を受け、自らの生の終わりをさらに強く意識しながらもより創作活動に没頭していった。

 詩や日記など、康花さんの言葉も随所で紹介。母への思いや、生死についての意識などがつづられている。第8章「光と闇の記憶」では、暗闇の中に光を感じさせる銅版画を言葉と共に展示した。同館学芸員・渋田見彰さんは「言葉を巡らせて、体感できる空間にした。絶望だけではなく希望もあってほしいという思いも込めた」と話す。

 一昨年、松本パルコで開催した「パルコde美術館」で、地元にゆかりのある作家の一人として紹介したことが同展のきっかけになった。正親さんは「病に苦しみながらも、創作の手を止めることは作家の魂が許さなかったのだと思う。芸術には、ちょっと立ち止まって考える時間をくれる役割がある。自分自身の人生を振り返ってもらえれば」と呼びかける。

 開館時間は9時~17時(入場は16時30分まで)。入場料は、大人=1,000円、大学生、高校生、70歳以上の松本市民=700円、中学生以下無料。月曜休館、12月29日~1月3日休館。来年3月24日まで。

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