特集

クラフトフェアまつもと2008特集【後編】
手にすることで生まれる「思い」を語れる場所

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■「作る人」と「使う人」の間に店すら入らないシンプルさ

フェアでは木工、陶磁器、皮革、ガラス、染織、金属、その他(石・楽器・紙・ろうそくなど)と幅広い分野のクラフト作家が出展する。特に近年は「その他」の分野で出展する人が多く、分野にとらわれることなく、さまざまな作品が公園に並ぶ。

松下香葉子さんのバック緑の公園に映えそうな織りのバックは素朴な味わい。長野県安曇野市豊科在住の染織作家・松下香葉子さんは縫うだけではなく羊毛から糸を紡いだり市販の糸を使ったりして、まずは布を織る。織った布でバックやコースターなどを制作する。松下さんの作る布は暮らしにすっと溶け込むようだ。「フェアでは『何を使っているの?』『どうやって織っているの?』といった、お客さんとのやりとりが楽しい」という。

田口司緒里さんのボタン真鍮(しんちゅう)や洋白など金属のボタン。表面をよく見ると何度もたたいて作られていることがわかる。それぞれの形と、それぞれに合わせた穴の数。鍛金(たんきん)作家の田口司緒里さんは関東出身。信州に移住し、昨年の冬から長野県木曽郡大桑村の廃校となった旧大桑小学校元理科室に工房を構え、制作している。銅、真鍮などの金属を一度高温で熱してから冷やしてたたく。ボタン以外にも豆皿やトレイ、片手鍋など日常に使う道具を作っている。「普段は一人で作っているので…。これだけたくさんの人と会う場というのはほかにはない。お客さんにも、作家さんにも」という。

DMにも使われた花塚光弘さんの小さい木の家今年のフェアのDMにも使われた小さい木の家。木の持つ色合いを生かしながら、それぞれの家の表情を作り上げていく。今年のフェアの実行委員長を務める木工作家の花塚光弘さんは工房とギャラリーを長野県北安曇郡松川村に構えて活動している。煙の上る小さい家は思わず微笑んでしまうようなあたたかみがあり、作り手の花塚さんと話すとその雰囲気がそのまま伝わってくる。

「クラフトフェアのお客さんは、いいお客さん」と声をそろえる。3人とも、フェアに出展後、実行委員としてフェアに関わるようになった。大変な面もあるというが「かかわれることがうれしいし、楽しい」という。普段、作品を作るときは一人で作っていることがほとんど。フェアは作家と来場者というつながりと、作家同士という横のつながりができる場所。年に1度「フェアを作る」ということが作品作りにもいい刺激になっている。

■「作る人」と「使う人」を直接つなぐ「場所」

会場のあがたの森公園。旧制松本高校の古い校舎もフェアの雰囲気作りに一役。出展者、来場者との関係が作り上げてきた空間。そしてもう1つ、この空間を作った要因を会場の「あがたの森公園」だというのはNPO法人松本クラフト推進協会の竹内真理子さん。「この公園を最初に選んで借りることができた、ということが何よりの幸運」と話す。旧制松本高校の古い校舎と、新緑がまぶしい木々。「どこをとっても絵になるこの場所が、フェアを育ててくれた」という。以前は機織(きしょく)で出展していた竹内さんは現在、専従スタッフとしてフェアを支えている。立ち上げ当時からかかわってきた中で、変わることのない「自由なのびやかな空間」や年々増えていく出展者・来場者をずっと見てきた。「フェアの雰囲気は、出だしから数年間で作り上げてきた雰囲気。今ではこの自由さを『松本のクラフトフェアらしさ』と認識してもらっていると思う」と話す。

■手にすることで生まれる思い-それを言葉にできる場

インタビューを行った「クラフトフェアをつくるひとたち」展を開催していたクラフトステーションギャラリーインタビューの場となったのは、クラフトフェアに出展する作家たちの作品を一足先に展示しているクラフトステーション。互いの作品を手に取りながらどうやって作っているのかと、談笑が始まる。銅の片手鍋を手に「1枚の銅板をバーナーで熱して、柔らかくしてからたたく。最初は大きな木づちで力を込めてガンガンと…」と話す田口さん。松下さんのバッグと田口さんのボタンを並べて「このボタンはどうかな」と合わせる花塚さん。作品を手にすると、興味が次々とわいてきて、話は尽きない。

5月24日、25日のあがたの森公園では、こんな光景があちこちで見られるはずだ。

昨年のクラフトフェア2007の様子

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