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松経インタビュー☆Match2008-09-08

松本のパン職人【街のパン屋さん編】

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「松本はパンの街」と言われることがある。
街中を歩くと老舗や新しい店、車で郊外に出るとカフェを併設した店…業態も、並ぶ商品もさまざま。
そんな「松本のパン屋さん」の歴史や思いを紹介するインタビュー特集「松本のパン職人」。
前編では「街中のパン屋さん」として2店の「老舗」に話を聞いた。

■大事なものは自然に残っていく
― 「SWEET(スヰト)」4代目社長 渡辺匡太さん(35)

松本市の観光スポット、縄手通りに1923年に開店して以来、定番のフランスパンや人気のやさいパンなどを提供し続けるベーカリー・カフェ「SWEET(スヰト)」。初代がアメリカで開業したのは1913年のこと。現在は縄手店の他に「石窯焼パンの城 並柳SWEET」、駅前の井上百貨店とアイシティ21内にカフェも構える。4代目社長の渡辺匡太(わたなべきょうた)さんに話を聞いた。

松本市の観光スポット、縄手通りに1923年開店。―アメリカで開業したんですね
日本から大量に移民を行っているころで、初代も大志を抱いて新たなチャンスを求めてアメリカに渡ったんでしょうね。シアトルで開業をしました。10年後の1923年、松本に戻り現在の場所で開店しています。そのころから続いているパン屋も何軒かありますが、県内でフランスパンを最初に扱ったのはスヰトだと聞いています。

―渡辺さんが4代目として店を継いだのは?
10年前までアメリカでホテルに勤めていて、直接パンには関わってはいませんでした。帰ってきたときには日本とアメリカとで仕事の環境がこうも違うんだなとカルチャーショックがありました。5年前に店を継いでから、直接お客様と接するベーカリーをやっていきたいと思っていたので、卸よりも小売り部門の比重を高めてきました。アメリカでいろんな人種の中で人と接してきていたので、柔軟に対応することなど、今のやり方に生きていると思います。

4代目社長の渡辺匡太さん。―創業から95年、伝統を意識していますか?
伝統的なことというのは、結果的に長くやっていることでしょうが、それが良いってことではないと思っています。生き残っていくには何が必要かということしか考えていなかった…。その中で、やり方や接し方であったり、商品であったり大事なものは自然に残っているのではないかと思います。

―昔からある定番商品とオススメ商品は?
昔からやっていることもあって、フランスパン系の人気が高いです。粉と塩とイースト菌のみで作る一番シンプルなパン。シンプルだから難しいですね。ごまかしがきかないですから。「やさいパン」という総菜パンも長く人気商品になっています。並柳店で人気のカレーパンは完全に手作り。お肉も相当入っていて、時間を掛けて作っているので全くほかのものとは違うと思います。

昔から作っているフランスパンはやはり人気が高いとのこと。―作り方や素材でこだわっているものは?
できるだけナチュラルに作っているので、あまり添加物は入れていません。実は入れ方もよくわかりません。大手メーカーのパンを見ると、なぜそんなにいろんな添加物を入れる必要あるのかと思うくらい入っている。スヰトの場合、食パンにはまったく添加物は入っていません。その分傷みやすいこともありますが、ナチュラルな分仕方ないかな、と思っています。あと何か違うといえば「水」ですね。ここでは敷地内にある井戸の水を使っています。発酵とかにも影響及ぼすし、ポイントになっているのかもしれませんね。

―自分が食べて好きなパンは?
今、はまっていてお昼に自分で買って食べるのは、並柳店の「一口カツサンド」です。店で揚げ立て作り立てにこだわっているので、買ったときカツがまだ熱いんですよ。でき立てで確実に「ウマイ」です。

―今後作っていきたいパンなどはありますか?
旬の素材を使って、季節に合ったパンを作っていきたいと思っています。一年中同じ顔ぶればかりだと面白くないですし。現在それに取り組んでいます。例えばこれからはかぼちゃや、サツマイモ、きのこなどの「秋」の素材を使ったものを出す予定です。

イートインも可能なスヰト縄手店店内。―今後の「スヰト」としての目標は?
縄手店はベーカリー・カフェ、並柳もカフェスペースがあって、井上・アイシティにはカフェの店もあります。デリバリーの移動販売も行っていて、パンをいろんなチャネルで売ることができる。スヰトとして一つの形になってきたと思うので、あとはそれぞれの部署の精度を高めるということです。よくお世話になっている「ブロートハイム」(東京・世田谷)というパン屋さんがあります。パンだけではなくて、接客なども総合的にレベルが高いと思っています。そこが目指しているパン屋さんのひとつです。サービスの面でもパンの質の面でもクオリティーを高くしていくこと、そういう組織にしていきたいです。

「長いスパンでの夢は?」との質問には「創業地のシアトルでのオープンをしたい」と語ってくれた渡辺さん。5年後の100周年に合わせてできればと目標に掲げている。古くからの商店街に昔から当たり前のようにあるパン屋さん。今まであまり気にすることがなかった歴史や思いにふれ、多くの客に支持され続けている理由が見えたように思う。

◆SWEET(スヰト)
(縄手店)松本市中央大手4-2-12 TEL:0263-32-5300
営業時間 9:00~18:00
http://www.sweet-bakery.co.jp/

■こだわりがないのがこだわり
― 「パンセ小松」4代目店主 小松治夫さん(58)

松本でほとんどの人が知っているであろうパン屋が、松本市大手にある。大正11年からパン屋として営業している「パンセ小松」。食パンや味噌パン、牛乳パンなどの定番品から、砂糖のたっぷりかかった菓子パン、キャラクターの顔をあしらったパン、カツなどをはさんだ総菜パンなど、常時130種類ほどのパンが店頭に並ぶ。親から子へ…。受け継がれる「つながり」をパン屋歴30年、4代目店主の小松治夫さんに聞いた。

松本市みどり町…どこか懐かしい街並みの中に「パンセ小松」はたたずむ。―86年間、ずっと同じ場所で営業しているんですか?
ずっと同じ場所です。パン屋は大正11年からって聞いてるけど、それ以前は穀屋や造り酒屋など、いろいろしていたみたいですね。何でパン屋かっていうと、穀物を扱っていたっていうのもあるし、当時松本50連隊っていう軍隊が来たり、松本高等学校ができたり、ちょっとハイカラなものが入り始めていた時期だったっていうのが関係しているんじゃないかな。軍隊にパンを納めることもしていたみたいなので、需要があったんでしょうね。

―4代目を継いだのが5~6年前とうかがいましたが、パン屋を継ぐことについては?
まぁ、長男だしね(笑)。大学を出てすぐにパン屋に入りました。それまで手伝いなんかはしてなかったけど、子どものころからずーっとパンや、今はやっていないけどケーキを作ったりするのを見てきたから、感覚的に体に「パン屋」が染み付いているっていうのがありました。

昔からある「あんパン」や「クリームパン」をはじめ、店頭に並ぶパンの数は、常時130種類ほどという。―「昔からの味」を守っているのですか?
歴史が古いから、そう思われがちだけど、昔からのものを守るんじゃなくて、その時代に合ったパンを作っていく。原材料だって昔に比べたらはるかにいいものになっているからね。でも昔から食べてくれているものは作り続ける。「守る」じゃなくて「作り続ける」。

―苦労したことは?
パン屋として働き出して苦労したことはないけど、「発酵の見極め」には10年くらいかかったかな。パンは生き物(発酵食品)だから、発酵を見極められればパン作りの何十%かは決まる。「何度でこね上げて何時間置く」なんていう一応の目安はあるけど、回りの気温や季節によって変わってきてしまう。パンによって、使う酵母や発酵の時間も違うので、それぞれのパンに適した生地を使いますしね。教科書どおりにいかないものなんですよ。パン生地を見て「これが、今一番成形しておいしく焼ける状態」というのが迷わずわかるようになるには、なかなか大変でした。

―素材にはこだわっている?
粉は昔からの大手製粉会社で作っているものを使っているし、水は井戸水があるけど衛生上の関係で水道水を使っている。「こだわりがないのがこだわり」で、いかに素材を組み合わせて発酵で一番いいタイミングを見極めて作れるかの方が大切かな。

―昔からある「定番」のパンは何ですか?
松本名物とされている「味噌パン」は今も作り続けています。あとはアンパンとかコッペパンとか…、「牛乳パン」は昭和の30年代半ばころから。そのころは「牛乳パン」や「頭脳パン」など、大型で真ん中にクリームを挟むのが流行り始めた時期で、各社作っていたと思います。

松本名物「味噌パン」には、松本城のイラスト入り。―「味噌パン」は、他のパンとちょっと雰囲気が違いますよね?
「味噌パン」は、実はパンじゃないんですよ。あれはクッキーなんかの系統で「半生菓子」っていって、日持ちのするお菓子として始まったんです。だから軍隊も持っていっていたんだろうね。味噌パンは、薄力粉と水とベーキングパウダーをさっくり合わせて型で抜いて焼くもので、パンみたいに生地をこねない。酵母も使わないし温度も関係ないから、パンより簡単に作れます。「味噌パンの味」を知っている世代の人は少なくなってきたけど、やっぱり作り続けていきたいものですね。名物だからってわけじゃないけど、昔から買ってくれている人もいるし、出来上がりを待ってくれる人もいるもんだから。

―好きなパンは何ですか?
自分が好きなのは食パンだね。いかにして「食事としてのパン」を作っていけるかを考えているので。うちは食パンだけで14種類あって、時期によって増えたりもする。特に「エトランゼ」(6枚入り310円)は、上質な小麦粉と、水の代わりに牛乳を使っているから「一番おいしい」と思ってるけどね。

4代目店主の小松治夫さん。今日も「おいしい」と言ってくれるお客さんのために、パンを作り、笑顔を見せる。―歴史のあるパン屋だけに、今後のことが気になるのでは?
息子がいるけど、別の仕事をしています。パン作りをしたことは一度もない。「長男だから…」と思って継いでくれるとうれしいけど…。自分の子どもじゃなくても店は継いでもらいたいと思っていますけどね。今、58歳で体力的にしんどいけど、お客さんが「おいしい」っていってくれるから頑張れる。いくつになってもそれを励みに作っていきたいね。

駅から歩いて15分ほどかかる場所にも関わらず、近所の人、仕事帰りのサラリーマン、学生…と、取材中も客が途絶えることはなかった。「最近は若いお客さんも増えていますね。自分で何か発信しているわけではないんだけど、お客さんがお客さんを連れてきてくれています」と小松さん。小松さんの父が働いていたときの常連さんは、今でも足を運んでくれるという。そんなお客さんが買ったパンは、子どもへ、そしてまたその子どもへと食べ継がれていく。「小松のパン」は親から子へ、人のつながりを受け継ぐ、大切なコミュニケーションのひとつなのかもしれない。

◆パンセ小松
松本市大手4-9-13 TEL:0263-32-0172
営業時間 8:30~19:00 日曜・祝日定休

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