松本市美術館で「柳宗理展」始まる-座談会に大橋歩さん、深澤直人さんら

座談会は申し込みが殺到し、受付は20分で終了したとのこと。貴重な機会に熱心にメモをとる観客の姿も。

座談会は申し込みが殺到し、受付は20分で終了したとのこと。貴重な機会に熱心にメモをとる観客の姿も。

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 松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-3400)で5月16日、特別展「柳宗理展~手から生まれた、くらしのかたち」が始まった。初日の16日には、オープニングセレモニーと記念座談会が行われた。

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 柳さんは1915(大正4)年、東京生まれ。父は民藝運動の指導者として有名な柳宗悦さんで、父の収集品に囲まれた幼少期が柳さんの原点とも言われている。今回、「民藝」「工芸」「クラフト」などとのかかわりから生まれた「クラフトフェア」「工芸の五月」に合わせ、同展の開催が決まった。

 会場には、家具・キッチンツール・テーブルウエアなどの生活道具から、高速道路料金所やバス停などの公共建造物まで、広範囲にわたりデザインを手がけてきた製品や模型、試作品を合わせて約230点を展示する。柳さんの代表作ともいえる「バタフライスツール」の試作品や図面、東京オリンピック・札幌オリンピックのトーチの模型や競技場の座席、野毛山公園(横浜市)の案内板やベンチ、ゴミ箱なども並ぶ。

 16日にはオープニングセレモニーに続いて、パネリストにイラストレーター・大橋歩さん、木工デザイナー・三谷龍二さん、プロダクトデザイナー・深澤直人さんを迎えた記念座談会が行われた。前半は柳さんとの出会いや自らの仕事について、後半は柳さんがデザインしたアイテムを取り上げ、使い心地や感想などを語り、集まった200人弱の観客が熱心に耳を傾けた。

 「エレファントスツール」について、深澤さんは「柳先生の個性が形になった代表的な作品だと思う」とコメント。最初に作られたものとは現在、材質が変わっているため「今は座ると少し沈むので…もともとのエッセンスとはちょっと違ってきているかも」とも。「ステンレス・カトラリー」については「すごくきれいだと思う。木で作っても使える形」と自身も木のカトラリーを制作する三谷さんが感想を述べた。「テープカッター」を見た大橋さんが「私、これ使っています。最初は柳さんの(デザイン)とは思ってなかった」と話すと、他のパネリストからは「なかなか手に入らないもの」とも。「貴重だから、とっておいた方がいい」と深澤さんが言葉を添えると、会場から笑いが起こる一幕も。

 柳さんのデザインが水道の蛇口やバルブなどにも及んでいることについて、「バルブを回す感覚なんていうのは、もう体の中に一つの感覚として入りきってしまっている。その基を作ったということに感動する」と深澤さん。「柳さんのデザインは『幾何形体』を持っていない。『幾何形体』の対照として『だれている』という言葉を使うが、これは悪い意味じゃなくて『生活で使う』という意味。手で作る、なでていく形で、コンピューターが出せない味」と話した。

 開館時間は9時~17時。入場料は、大人=1,000円、大学生、高校生、70歳以上の松本市民=600円、中学生以下無料。月曜休館。6月28日まで。5月30日、6月19日は「ナイトミュージアム」として20時まで開館。学芸員による「ギャラリートーク」を5月23日、6月19日に行う。

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