絵本「種をあつめる少年」の原画展が現在、松本市の書店「栞日(しおりび)」(松本市深志3、TEL 0263-87-5733)で開催されている。
1月に出版した同書は、フードディレクター・さわのめぐみさんが文を、版画家・イラストレーターの中村まふねさんが絵を手がけた。レストランに「種」をもらいにやってくる「坊ちゃん」が、夜空に種をまく旅に出る物語で、さわのさんがこれまで書きためてきた「夢日記」をベースにしたという。「料理の仕事を通じて、ごみとして捨ててしまう野菜や果物の種に『小さな生命の源』を感じるようになった。その種を、空想の友達である『坊ちゃん』に託して、イメージを膨らませた」と話す。
同展では、原画のうち銅版画10点と、手描きのもの1点を展示。ちょっと不器用な坊ちゃんが、レストランの作業を手伝ったり、種をまくために大きなヤギの姿になって夜空を駆け上がったりする様子が繊細なタッチで描かれている。「子どもの頃、お菓子の空き箱などに大切なものをしまっていたことを思い起こして作った」というオリジナルのクッキー缶(3,000円)も用意する。
さわのさんは1984(昭和59)年生まれ。実家が食堂ということもあり、「物心がつく頃には料理の世界にいた」と振り返る。2年間イタリアで修業した後、2014(平成26)年に独立。物語をイメージしたコース料理を作るイベント「ものがたり食堂」の開催や、ホテルやカフェのレシピ開発など多岐にわたって活動している。
コロナ禍で、携わるイベントや企画していた個展が延期になり、「待ちの姿勢では実現できないことも多く、何か別の形のものを作りたいと考えていた」とさわのさん。2020年11月、喫茶店で偶然出合った中村さんの作品を見て、「自分の中の物語を形にできるかも」と感じて絵を依頼した。
同書の編集を担当した「ニジノ絵本屋」(東京都目黒区)で1月に開催したのに続き、2カ所目の巡回展となる。「子どもの頃、何かを集めていた経験を持つ人も多いと思う。今思えば取るに足らないものかも知れないが、当時の本人にとっては価値のあるものだったはず。そういう何かを大事にしていた気持ちを思い出してもらえれば」とも。
営業時間は7時~20時。水曜定休。4月26日まで。