現代美術家・松本春崇さんによる、建物に縄をかけて縛る現代アート「旅する家縛りプロジェクト」が7月6日、松本・里山辺の「おっとぼけ美術館」(松本市里山辺、TEL 0263-33-3348)で行われた。
「縄文化」を現代的な芸術表現を通じて継承していこうとスタートした「家縛りプロジェクト」。今回は5月に東京・東小金井を出発し、甲州街道沿いを移動しながら、10カ所での「縛り」を予定する。
松本では、梓川にある築約100年の民家と同館で開催。2011(平成23)年、同館館長の相澤和典さんの自宅を縛った縁もあって行うことになった。使用したカラフルな毛糸は相澤さんからのリクエスト。同館の周囲にぐるりと縄を掛け、屋根にも上がって通し、端は館内に引き入れた。見学に来ていた女児が待っている間に、ピンク色の毛糸で作った丸い飾りを最後にアクセントとして添えて、1時間ほどで完成した。
松本さんは千葉県市川市在住。フランス大使館で使われていた事務用品や雑貨などを集めてひもで縛り展示したことをきっかけに、2010(平成22)年にプロジェクトを始めた。個人宅やギャラリー、美術館のほか小学校や銀行などの国内各地の建物を中心に、2015(平成27)年にはアメリカ・カリフォルニアのボートハウスでも開催。「いろいろな方が興味を持ってくれる。獅子舞みたいなもので、スムーズに受け入れてくれる人も多い」と話す。
「長野県内は、養蚕や御柱祭、縄文土器など縄やひもと結び付きが強い文化が多く残っている」と松本さん。今回は、諏訪周辺を「縄の聖地」と位置付け、家縛りのほか、ワークショップやパフォーマンス、トークショーを開催。8月31日には、茅野市美術館でシンポジウム「ひも縄の精霊と家縛りプロジェクト」も行う。
同館では、7月20日まで縛ったままの状態を見ることができる。「縛った後には『縄の思い出』が残る。それも感じてもらえれば」と松本さん。