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松本の2会場で工藝デザイナー・井出八州さん作品展 伝統の技術と美を生かし

「伝統工芸から学んだことを表現していければ」と井出さん

「伝統工芸から学んだことを表現していければ」と井出さん

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 松本市の工藝(げい)デザイナー・井出八州さんの展示「器の美世(みせ)/美世の器」が現在、芸大・美大受験予備校「マツモトアートセンター」(松本市大手1、TEL 0263-33-5511)内のギャラリーと「飯田屋飴(あめ)店」(大手2、TEL 0263-32-1983)開催されている。

飯田屋飴店の展示の様子

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 「マツモトアートセンターギャラリー」では、カップやトレー、ランプシェードなどこれまでに手掛けた作品約20点を展示する。名古屋市のセレクトショップ「Analogue Life」のオリジナルプロダクトラインは、マンガンを含んだ釉薬(ゆうやく)を使い、金属のような表情に仕上げた。生地には有田焼、焼成には伊万里焼の技術を用いている。塩尻市の「丸嘉小坂漆器店」のグラスは、ガラスのつやと漆のマットな質感の対比が特徴。グラスの内側と外側でも漆の部分の印象が異なる。格子状に木漆を塗ったガラスのトレーは、重ねるごとに焼き付けるという手間のかかったもので、縁は木曽地方の曲げわっぱの技術を取り入れた。

 「飯田屋飴店」では、同店に合わせて新たに企画したアイテムを展開する。看板商品の「あめせんべい」から、木目に沿って割り裂く「へぎ」加工をイメージ。サワラ材を用いて、重ねると一つの箱のようになるプレート「へぎ皿」や、テトラ型のあめから着想を得た「あめちゃすくい」などを制作。サワラ材の香りを生かした芳香剤は、「あめせんべい」と同じパッケージデザインにした。「3つのアイテムを作ることで、結果的に木材を余すことなく使うことができたのも良かった」と井出さん。

 井出さんは安曇野市生まれ。2006(平成18)年、多摩美術大学環境デザイン学科を卒業し、建築・インテリア・プロダクトなどのデザインを手掛ける「SIMPLICITY」(東京都目黒区)に12年勤務した後、2017(平成29)年に独立した。伝統工芸をベースに、職人や作家とプロダクト開発やブランディングを行っている。「日本のものづくりにのっとった工芸のデザインを心掛けている。現地で見て、感じたことから学び、それを生かしていきたい」

 「マツモトアートセンター」で学んでいたという縁で、同校代表の北沢一伯さんが声を掛け、初の展示が実現した。それぞれ入り口には、くぐるときの手の動きを描いた色違いののれんを掛ける。「向かい合う2会場で展示することで、町としてのつながりを感じられる空間を作りたかった。両会場に足を運んで楽しんでもらえれば」と北沢さん。

 価格は、グラス=5,500円~、トレー=1万3,200円~など。営業時間は、マツモトアートセンターギャラリー=13時~17時、飯田屋飴店=9時~18時。6月13日まで。

 ※美世の世は十に廿が正式表記。

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