松本に工房を構える木工デザイナーの三谷龍二さんが、自身のギャラリーショップ「10センチ」(松本市大手2)ができるまでの過程などをまとめた単行本「三谷龍二の10センチ 小さな町のギャラリーからはじまる暮らしの愉しみ」がPHP研究所から刊行された。
同書は、同店ができるまでや今まで開催してきた展示会の様子などをまとめたもの。オープン前夜のパーティーや、企画展から発展したピクニック、クラフトフェアの際に開かれた「三谷バー」など、食事のシーンも多く紹介。三谷さんのデザイナーとしての顔だけでなく、「人が集まる場所」を作ろうとする姿が見られる。表紙にある同店のオブジェは、同書出版のために三谷さんが制作したもの。
もとは古いタバコ店だった同店。「この建物を残したい」と思ったことがきっかけでオープンを決め、建物をリノベーションすることに。その様子が細かく書かれた第3章「『10センチ』ができるまで」は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載していた「10センチ日記」の一部で、2010年9月から完成する12月までの工事の様子をつづっている。古い建物だったため問題が多く工期も延びたが、「大変だったけど楽しかった」と三谷さんは振り返る。「工務店の人も工事をしながら、屋根に施されていた工夫や天窓の処理など、昔の職人技を見て感心していた。楽しんでくれていたみたい」とも。外灯など専門家に修理を断られたものは自分の手で直した。
「ほぼ日刊イトイ新聞」の担当者からは「工芸家は近寄りがたい印象があったが、(この本を読んで)近く感じることができた」と言われたという。「作家とギャラリーの関係が見えると思う。これから店を作りたいと思っている人が読んでも面白いのでは」と三谷さん。
体裁はA5版、160ページ。価格は1,890円。