昨年9月21日、「イオンモール松本」がオープンした。JR松本駅から1.5キロという立地で、敷地面積約6万2500平方メートルに約170の専門店が出店、駐車場台数約2300台という県内最大級の商業施設。開業から半年以上が過ぎ、「イオンモールがある風景」は日常になじんできている。
この場所の再開発計画が発表されたのは2013年5月。当初は、地元の声を聞き、まちづくりの観点に配慮した開発が行われるかどうか不安視する声もあった。その後も市民から、「なかなか『顔』が見えない」と言われていたが、オープン前の7月には、近隣住民とスタッフが参加して植樹祭を開催。イオンモールの吉田昭夫社長は「オープン後もさまざまな声を聞き、地域に根差した店づくりをしていきたい」とコメントした。
モール内ではさまざまなイベントを実施。あがたの森公園で「クラフトフェアまつもと」が開催される5月26日・27日には、「空庭」屋外のやまびこ広場で「クラフトスクエア」を開催する。NPO法人松本クラフト推進協会と共に初めて取り組む同イベントのこと、そしてまちとの関わり方について話を聞いた。
― クラフトスクエアのきっかけは何だったんですか?
「クラフトフェアのときに、ここで何かやらないんですか?」というお問い合わせをいただいたことがきっかけです。それで、何かやろうと考え始めました。
― お客さまの声から始まったんですね。
クラフトフェアの会場となるあがたの森公園は、ここから歩いてすぐの距離ですし、開催される2日間は、市街地でもさまざまなイベントがあります。でも、せっかく何かするのであれば、私たちだけで企画するよりはしっかり取り組んだほうがいいだろうと思い、主催するNPO法人松本クラフト推進協会に連絡を取りました。
― 具体的に動き始めたのはいつごろですか?
最初、お問い合わせをいただいたのは昨年だったと思いますが、実際に動き出したのは3月くらいですね。
「クラフトスクエア」が行われる「空庭」屋外のやまびこ広場
― 両者で取り組むことについては、スムーズに進んだんでしょうか? と、いうのは、以前、カタクラモールのときには、フェア当日の駐車場利用が問題になっていたので…。
今は、そのころの事情とは違いますから。駐車場についても、オープン後、来客の推移を見ながら公共交通機関でのご来場を呼び掛けたり、駐車料金サービスを行ったりと、柔軟に対応をしています。
― 確かに、現在、松本市美術館で行っている「草間彌生展」でも、「あがたの森側駐車場」の利用を案内していますね。
松本市美術館やまつもと市民芸術館などからご連絡をいただき、連携しているものもあります。
― では、特に問題はなく。
今回は、出展者とのやりとりは推進協会にお願いして、私たちは周知に力を入れています。クラフトフェアと同じ趣旨を持つサテライト会場として位置付け、まずは多くの人に知ってもらえるように。
モール内のデジタルサイネージでもPRが行われている
― このように協働で地元のイベントを盛り上げるようなことは、他の地域のイオンモールでもあるのでしょうか?
全国各地のモールで取り組みはあると思います。当店でもほかに、館内に設置したコースでウオーキングを楽しんでもらう「モールウォーキング」は市民の健康づくりに取り組む「松本ヘルス・ラボ」と一緒に取り組んでいます。この場所で営業している以上は、皆さんと一緒に、まちを盛り上げていきたいと考えています。
― そういうイベントは、どのように始まるのでしょうか?
当店から提案する場合もありますし、逆にお声掛けをいただくこともあります。地域活性化につながるようなことでしたら、ぜひご相談いただければ。
― 結構、気軽に相談しても大丈夫なんですか?
意外と「敷居が高い」と感じている方が多いようなんですが…。私たちとしては「ちょっと聞いてみよう」という感じで来ていただけるとうれしいです。
― せっかく場所があるから、使ってほしいということですね。
クラフトスクエアの会場となるやまびこ広場をはじめ、館内にはホールなどもあるので、いろいろと活用してもらいたいです。私が松本に来て感じているのは、「松本の街が好きで、もっと盛り上げたい」という人が多いということ。そういう人たちと一緒にできることが増えていくといいと思っています。
― クラフトスクエアは来年以降も継続的に?
とにかく初めてになるので、やってみないと分からないという部分もありますが、続けていければいいですね。
空庭1階にある巨大だるまは「RITUAL the crafts」の仲田慎吾さんがデコレート
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開業時の記者会見で吉田社長は「クラフトフェアまつもと」や「セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)」など地域の文化活動を例に挙げ、「プレイベントの実施や、商店街との連携などにも取り組み、これまで以上に地域に根差した店にしていきたい」と話していた。連携が増えることで、市民との距離が少しずつ近づいている。
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