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変わりゆく街、これからの街~本町・信毎メディアガーデン

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4月28日に本町通りにオープンする「信毎メディアガーデン」。ルーバー状の外壁と木製窓枠が特徴的な地上5階建てのビルの1~3階には、飲食店やアウトドアブランドなど11ショップが入るほか、ホールやスタジオを設け、市民が集うコミュニティーゾーンの機能も備える。

同ビルの4階と5階には信濃毎日新聞松本本社が入る。2014年10月、松本・宮田から中心市街地への移転を発表。取材・営業拠点とするだけではなく、「市街地のまちづくり、地域活性化にも貢献できる空間づくり」に向けて、市民参加のワークショップ「まちなかプロジェクト」も立ち上げた。オープンに至るまで、どのようなことがあり、稼働を間近に控え、どんなことを感じているのかを同社松本本社副代表・塩原武文さんに聞いた。

同社松本本社副代表・塩原武文さん

信濃毎日新聞松本本社副代表・まちなか情報局長 塩原武文さん
1982(昭和57)年4月に同社に入社し、編集局報道部に勤務。1994年に中野支局長、その後、労務部や総務部を経て、2010年に松本本社総務部長に。2014年に松本本社副代表に就任。開業に合わせて発足したまちなか情報局の局長も兼任する。

市民も、観光客も、そして情報も集まる場所に

― 移転するきっかけは何だったんでしょうか?

もともと、松本本社は松本城の近くにあったんです。印刷工場を併設するために1970(昭和45)年、宮田に移転しました。その後1994年には、塩尻に新たに印刷工場(塩尻製作センター)が完成。今回、建物の老朽化が進み、移転を検討したときに「(工場は必要ないので)それなら街中に戻ってくればいいのではないか」という話になりました。

― およそ半世紀ぶりに戻ってきた、と。

そうですね。やはり利便性などを考えると街中の方がいいので。それで、戻ってくることになったときに、地域の人たちから「土日閉まっているような建物はやめてね」と言われたんです。確かに、ここは街中のにぎわいを担うような場所。いわゆる「オフィスビル」は嫌だ、ということですよね。では、一体どのような場所がいいのだろうかと考え始めて、地域の人たちが集まれるような場所ならいいんじゃないか、だったらその人たちの声を聞いてみたらいいんじゃないかということになりました。


見晴らし良いスペース


MGプレス編集部が入る


サインも特徴的※いずれも2018年4月12日撮影

― 自分たちのオフィスを作るのに、地域の皆さんの声を聞くというのは珍しいですよね。

そこは新聞社が持っている、半ば公的な機関という性格があるのだと思います。あとは、本社(長野市)と違って、松本支社はどこにあるのか聞かれることも多かったので……。ちゃんと顔が見えるような、もっと市民に近い存在でありたいという思いもありました。

― 実際にワークショップを開いて、皆さんの声を聞いてみてどうでしたか?

「信毎さん、こういうの作ってね」という単なる要望ではなく、自分たちがどのように使うのか、どのように関わっていくのかという観点から、「あったらいい施設・機能」を挙げてもらいました。具体的にこの場所で、どのような活動が行われていくのかも分かるように意識しましたね。ショップやギャラリーのほか、ホールのような人が集まる場所、そして新聞社ということで情報が集まる場所、という声もたくさんありました。結果として、かなりの部分で反映できたと思います。

― 更地の状態のときに、演劇の上演や移動型ミュージアムでの展示などもありました。建物ができる前からにぎわいを意識していたようにも思えます。

この場所は町の中心部であり、駅から松本城をつなぐ観光ルート上にもあります。そういう意味ではやはりにぎわいというのは大事になりますね。

― 観光面でも、情報発信の大きな役割を担っていくことに?

そういう部分も期待されていると感じています。1階には「まちなか情報局」を設け、何か知りたいことがあるときに、取り次ぎやガイドの役割を果たしていきたいと考えています。人と情報、そして人と人をつなぐ機能。箱はできたので、あとはいかに上手く使っていくかですね。新たに立ち上げる「MGプレス」もその機能を担っていけると思っています。街中に集まってきた情報を発信して、さらにまた情報が集まってくるようなものにしていきたいですね。

― 情報を発信することでさらに情報が集まる。いい循環ですね。

新聞というのは、健全な読者に支えられています。健全な読者が健全な新聞をつくっていく。そういう面ももちろん意識しています。私たちは23日から業務開始、そしてビル全体のオープンは28日。これからがスタートです。皆さんがどのように使ってくれるのか、どのように使ってもらえるようにしていくのか、楽しみです。

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2015年6月に行われた「まちなかプロジェクト」のキックオフ。設計を担当する建築家の伊東豊雄さんや、「studio-L」(大阪府吹田市)社長のコミュニティーデザイナー・山崎亮さんを迎えてワークショップが行われた。その際、「民間企業が社屋を建てるのに、市民の意見を募るというのはこれまでになかったケース」と話した山崎さん。一企業でありながら地元市民と「情報」でつながる地方新聞社の特性を生かし、地域の人の声に耳を傾け共に「場づくり」して誕生した同所。人や情報の流れが変わることで街が変わる。現在、松本市美術館で開催中の「草間彌生 ALL ABOUT MY LOVE 私の愛のすべて」をはじめ、今夏、開催される「信州・まつもと大歌舞伎」や「セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)」など、街全体が盛り上がりを見せるイベントとの連動や、市街地活性化などにも期待が集まる。

信毎メディアガーデン