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松本・橋倉家住宅で「ここに、台本がある」 戯曲を介して感じた言葉を交わす

会場の橋倉家住宅はどこか懐かしい雰囲気。和やかに言葉を交わす参加者

会場の橋倉家住宅はどこか懐かしい雰囲気。和やかに言葉を交わす参加者

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 10年前に上演した戯曲を媒介として、さまざまな人が集って語り合う「ここに、台本がある」が9月20日、長野県宝・橋倉家住宅(松本市旭2)で行われた。主催は信州大学人文学部。

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 戯曲は、市内在住の劇作家・藤原佳奈さんが東京で働く20代後半の女性5人を描いた「夜明けに、月の手触りを」。藤原さんが主宰する演劇創作ユニット「mizhen(ミズヘン)」が、2013(平成25)年に上演した。今春、初演に出演した俳優が戯曲を声に出して読んでいた様子を見た藤原さんが「10年前に書かれたものとして、戯曲に触れることで、何かが生まれるかもしれない」と思い立った。台本にある言葉を「身体で考える」場として、「ここに、台本がある」を企画。その場で交わされた言葉や生まれた時間を形にした展示と、有志による作品の上演「『夜明けに、月の手触りを』から、展」を行うことを決めた。

 7月~8月、同展の会場でもある上田市の「犀(さい)の角」で「ここに、台本がある」を7回開催。藤原さんが台本を用意し、訪れた人と声に出して読んだり、言葉を交わしたりした。自身が暮らす松本でも開催したいと考え、信州大学人文学部の金井直教授に相談したところ、同学部の主催として実現。会場は、江戸時代の武家住宅の形式を残す建物で、当日は8畳ある「なかのま」で、ちゃぶ台を囲み、和やかな雰囲気で進行した。

 演劇に携わる人や大学生など、市内外の4人が参加。藤原さんも加わって、台本の一部を音読し、「黙読とは印象が変わる」「人の声で言葉を聞くことで、登場人物が何を思っているのかを考えることができた」などと感覚を語り合った。執筆当時、26歳だったという藤原さんは「自分は前に向かってオールをこいでいるが、周りを見ると皆、島にたどり着いていて『あれ?』と感じた」と話し、キーワードとして「結婚」「アラサー」などの言葉も上がった。「結婚は人生ゲームのマスみたい」という感想から、「人生ゲームの最新版には、独身ルートも用意されている」という情報も飛び出し、10年前と今を比較したり、自らの人生の転換点を振り返ったりしながら、会話が続いていった。藤原さんは「フィクションをきっかけに、自分のことを話し、誰かの話を聞くことを続けてきたが、もっとやってみてもいいと思った。貴重な時間になった」と締めくくった。

 17日には、東京・三軒茶屋でリーディングセッションとクロストークを開催。「問題解決の議論や正解を求める対話ではなく、ただ言葉を交わして、それを聞く。単純なはずなのに、これまでそういう場が少なかったから、逆に難しく思うのだと痛感した」と藤原さん。今後は、10月13日~15日に開催する展示に向け、「犀の角」で準備を進める。「性別や年齢に関係なく、さまざまな声をそのまま伝え、そのまま聞くことに可能性を感じている。展示までの間にオンライン企画も行うので、気軽に参加してもらえれば」と呼びかける。

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