南安曇農業高校(安曇野市豊科)の生物部が、1960~70年代に安曇野周辺で栽培されていたというワサビの品種「タカイ」を探している。
同部には1~3年生10人が所属し、5年ほど前からワサビの研究に取り組んでいる。生育への影響を遺伝子から考えてみようと、岐阜大学植物遺伝育種学研究室の山根京子准教授に連絡を取ってみたところ、以前、安曇野で栽培されていた「タカイ」という品種があることを知り、調査することにした。
同市が制作したパンフレットによると、「タカイ」は1960~70年代に栽培されていたという記録が残っている。5月ごろから、信州山葵(わさび)農業協同組合に問い合わせたり、校内にポスターを貼ったり、近所にチラシを配るなどしてきたが、有力な情報は集まらなかった。顧問の小林万喜子教諭は「組合からは現状、栽培している人はいないと聞いた。昔、作っていたところに放置されていたり、ひっそりと残っていたりすればという可能性にかけている」と話す。ワサビの品種は見分け方が難しいため、気になるワサビがあるという連絡をもらえば、生徒が出向いて採取し、検査する。
山根准教授によると、ワサビは、生育する山間部の環境の変化や乱獲など、さまざまな要因で自生地が失われ、特に在来品種は壊滅的な状況だという。同研究室では保全のための研究を進めており、「DNA解析と同時に文化地理学的な側面からも検証することで、人間の活動が植物の多様性にどのような影響を与えたのかを明らかにしたい」と話す。昨年、東京都三鷹市で見つかったワサビが、DNA鑑定で希少な在来種だと判明した例もある。「以前栽培していたことを知っている人がいなくなってしまうと伝承が危うくなる。時期的にはラストチャンス」とも。
「タカイ」のルーツは伊豆で、一度、北信地域に入ってきたものを安曇野・穂高で栽培するようになったという。「大々的に育てていたという文献があるので、もしかしたらどこかに残っているかもしれない。見つかれば、安曇野でブランド化できる可能性も生まれるはず」と山根准教授は期待を寄せる。
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