土を敷き詰めた舞台でダンス・パフォーマンス-70歳前後のエキストラも参加

公演後のポストトークの様子。メンバーは通訳を通しての質問に、一つ一つ丁寧に言葉を選びながら応じた。

公演後のポストトークの様子。メンバーは通訳を通しての質問に、一つ一つ丁寧に言葉を選びながら応じた。

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 まつもと市民芸術館・実験劇場(松本市深志3、TEL 0263-33-3800)で2月15日、ダンスカンパニー「ピーピング・トム」の初来日公演「Le Sous Sol/土の下」が行われた。

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 「家族の崩壊」をテーマにした3部作「トリロジー」の3作目となる同公演は、埋もれた地下室を舞台に死後の世界を埋葬された死者が行き交う姿を描く。5~6センチほど土が敷き詰められたステージには、時折、上(現実の世界)から土が降り注ぐ。本作から参加した主演の82歳の女優、マリア・オタルさんを中心に、時に回顧するかのように楽しげに、時に死に直面するかのように悲痛的に土の上をダンサーが舞う。複数のメンバーが体の一部を密着させたまま土の上を転げまわったり、土しぶきが上がったりと激しく、アクロバティックなパフォーマンスに観客は息を凝らして見入っていた。

 全国4カ所をツアーする同公演。各地で70歳前後のエキストラを募集しており、松本公演では69歳~73歳の男女5人が参加した。「死後の世界の住人役」としてステージ上をよろよろ歩いたり、つまずいたり、よろめきながらわれ先にとレースのように争うシーンに観客からは笑いも起こった。

 公演後のポストトークは、キャスト5人が土まみれになった体を洗ってから登場。土を敷き詰めたステージは映画「砂の女」(勅使河原宏監督作品、1964年)にインスパイアされたことや、体の一部を密着させたダンスについては「写真のポジとネガのように、『生』と『死』を表現している」といったことが振付師でもあるダンサー、フランク・シャルティエさんから語られた。

 主演のマリアさんは「演じる前は、『死ぬことは怖くない』と思っていた。でも、演じていくうちにさまざまな気持ちの変化があり、今は『死を受け入れる』ことは簡単ではないと思う」と話す。各地でエキストラを加えることについては、「参加してもらうことで『劇が生きている』感じが出る。特に今回は『レースのシーン』が素晴らしかった。次にも生かしたい」とフランクさん。最後は客席でトークを聞いていたエキストラ参加の5人も立ち上がり、観客に手を振って応えた。

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