市民芸術館全体を使ってパフォーマンス・ツアー、信大のゼミとタッグ

転がり落ちてはまた上っていく「階段主義」。中段・右は花柄の布を張り付けた人体彫刻「play hide-and-seek」

転がり落ちてはまた上っていく「階段主義」。中段・右は花柄の布を張り付けた人体彫刻「play hide-and-seek」

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 信州大学人文学部芸術コミュニケーション講座(松本市旭3、TEL 0263-37-3247)とまつもと市民芸術館(深志3、TEL 0263-33-3800)は2月1日から、同館全体を使った美術作品の展示とパフォーマンス「そこにアート-からだとかたちのあいだ」を開催している。

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 「身体表現と美術の融合」がテーマの同企画では、美術家の小林史子さんと彫刻家の津田亜紀子さんの作品がロビーや階段で展示されている。7日には、作品と融合する形で同館1~3階全体を使い、バックステージツアー形式でパフォーマンスが行われた。

 2階のメーンロビーに展示されている舞台で使う備品で作られた「reverse」(小林さん作)の前に集まった観客は、「パフォーマンス水先案内人」に先導されM2階へ。途中、階段で踊る「非常階段パフォーマンス」や会議室でのパフォーマンス「アクロバティック会議」を鑑賞しながら、普段入ることのできない同館の「裏側」へと歩を進めた。

 その後1階へ降り、同館エントランスへ抜けると花柄の布を表面に張り付けた人体彫刻「play hide-and-seek」(津田さん作)の横で、コンテンポラリーダンスカンパニー「レニ・バッソ」の2人によるパフォーマンス「人体/身体」が始まった。終盤、エントランスの階段横にあるエスカレーターにもつれるように乗り込み、感知式のエスカレーターが動き出す。上っていく2人を目で追っていくと今度は階段の上から黒い衣装を着た人たちが転がり降りてくる「階段主義」が始まる。これは振付家・伊藤キムさんが振り付けたもの。緩やかで長い同館の階段を転がり落ちては、立ち上がり、駆け上がり、また転がるという動きが繰り返された後、すべての人が2階へ上っていった。

 その後も観客は、さまざまな場所でのパフォーマンスを楽しみながら移動を続け、実験劇場の舞台上では実験劇場と主ホールを隔てるスクリーンに映し出された映像作品を鑑賞。同館の実験劇場の舞台と主ホールの舞台がつながっているという特殊な構造を生かし、最後はスクリーンを上げると、目の前に主ホールの赤を基調とした客席が現れた。

 同講座は、「非言語コミュニケーション講座」から名称を変更し、今年から開講された。船津和幸教授、専任講師の北村明子さんと同館は以前から交流があり、「美術とパフォーマンスをミックスした学生との企画を、迷路のような芸術館で何かできれば」(北村さん)という提案をきっかけに同企画が実現した。同館全体を使用した企画は初めてで、「パブリックエリアを利用しての展示やパフォーマンスは、美術品を守ることと来館者・利用者を守ることが必要になり、単に芸術の追求だけではなく、ある意味『芸術』と相反するような『常識』との調整が難しかった」と同館の田中美樹さんは振り返る。

 終演後に行われたアフタートークのゲスト、舞踊評論家の石井達郎さんは「よくここまでやった。オーガナイズした。市民は、松本城以外にもこういう劇場を持っているということを誇りにしていい」と両主催者に賛辞を送った。

 美術作品の展示は11日まで。学生たちは会期中、作品の保護と来場者に鑑賞についての提案なども行っている。

まつもと市民芸術館

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