松本のジン専門店「KINO」(松本市中央3)が、ボタニカルシロップブランド「草譯(くさわけ)」を立ち上げ、8月15日に販売を始めた。
シロップは、カルダモンをメインに、レモンやショウガ、コリアンダーシードなどを組み合わせた。グラニュー糖は最小限にして、隠し味にバニラを使った。店主の野村仁嗣さんは「ロックで飲むと香りが立ち、水割りだと丸みのある味わいになる。ビールや焼酎、ジンなどに加えればカクテルにもなるので、自由に楽しんでもらえれば」と話す。
野村さんはバーテンダーを志して、「バーの街」と呼ばれる松本に移住したが、働くうちに「自分と同世代の若者がバーにはいない」と気付いたという。その後、ラーメンとカクテルのイベントを企画したり、アルプスブックキャンプへ出店したりしながら、修業を積んだ。2019年7月、同店をオープン。「若い人もジントニックなら知っているだろうと思って、ジンに特化することにした。バーと呼ばれることが多いが、自分としては『ジンがある場所』くらいの感覚」。店内は一般的なバーのように酒を並べず、シンプルな空間にしている。
新型コロナウイルスの影響で、酒を提供する店から客足が遠のく中、自身が納得できるようなノンアルコールはないかと模索を始めた。地元・和歌山のかんきつ類を使ったジュースを考えたが、旬ではないために断念。メインの要素を決めて組み合わせていくという、ジンを提供する方法を生かして、シロップを作ってみることにした。和歌山の特産品であるショウガを脇役にしつつ、メインは同じショウガ科で相性がいいカルダモンを選んだ。「好きなジンでもある『ブース』がカルダモンやコリアンダーシード、バニラがベースになっていることもヒントになった。試してみたらしっくりきたので、試行錯誤しながら精度を上げていった」と野村さん。
製造は店で行い、瓶の煮沸消毒から、スパイスの下ごしらえ、ラベル貼り、梱包(こんぽう)、出荷まで1人で担う。現在は週1回の配送で、限定数を販売する。「今後は卸もできれば。例えば宿でウエルカムドリンクにするなど、ノンアルコールの飲み方の選択肢が広がる一助になれば」とも。
700ミリリットル入りで、価格は2,970円。販売はウェブサイトで行う。