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変わりゆく街、これからの街~伊勢町・松本パルコ

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「松本にはパルコがある」――松本で暮らす人なら、さまざまな文脈で一度は口にしたことがあるのではないか。地域の人たちにとって、松本パルコは街の特徴の一つであり、ランドマーク的存在として語られる存在といっても過言ではないだろう。

2016(平成28)年に千葉、2017(平成29)年に大津が閉店。今年2月、宇都宮と熊本の営業終了が発表された際には「松本は大丈夫?」という声も聞かれた。1984(昭和59)年8月23日にオープンし、今年35周年を迎える松本パルコの「今」と「これから」について、店長の城間盛一郎さんに話を聞いた。

パルコ松本店・店長 城間盛一郎さん

パルコ松本店・店長 城間盛一郎さん
1990(平成2)年、同社に入社。その後、札幌、厚木、宇都宮、渋谷など全国各店のほか、中国・蘇州や台湾でコンサルティングなども行う。2014(平成26)年春から現職。「松本で好きな場所は山麓線の途中で北アルプスを望める場所。家族経営の食堂がたくさんあるのもうれしい」

「パルコってこうだよね」という期待に応える

― 宇都宮、熊本の閉店が発表されて、さまざまな反応があったと思います。

「松本も同じ流れですか?」と聞かれることはありますね。地方都市の衰退と言われていますが、私は2つパターンがあると思っています。一つは、中心市街地の衰退。郊外にさまざまな施設ができた結果、市街地と呼ばれているエリアがどんどん活力を失っていく。そういう中で、撤退を余儀なくされる場合です。もう一つは、競合が多すぎる場合。同質競合になると各々が成り立つことは厳しくなります。しかし、松本の場合は、どちらも当てはまらないと思っています。

― 松本はここ数年で、さまざまな施設がオープンしました。

確かにそうですが、私たちと直接競合をしているわけではありません。例えば「イオンモール松本」と私たちでは、お客さまからのニーズ、期待されることは違います。

― お客さまからの期待とは??

「パルコってこうだよね」という部分、ファッションやカルチャー、アートなどだと思います。そういうものにときめいたり、興味を持ったりしていただける。そこは、ぶれることなくやっていきたいです。

2019年春の改装
今年春の改装では「キャスキッドソン」が甲信越初出店

― 確かに、「パルコってこうだよね」というイメージを持っている人は多いと思います。

ただ、時代は変化するので、そこは合わせていかなければなりません。開館当初、35年前はファッションが非常に大きなテーマでした。今は、ブランドや服だけでは、期待には応えられない。消費=買い物、ではなく体験や共感ということを重視する人が多くなってきていると感じています。

― ターゲットというと、やはり若者なのでしょうか?

「ターゲットは何歳ですか?」と聞かれることも多いですが、そこは年齢では捉えていません。消費も複雑化してきていて、例えば女子高生とそのお母さんが同じ服を着ていることもある。では、ターゲットって何だろうと考えると、新しいものやサブカルチャー的なもの、または、どこか触発されるようなもの、そういうものに興味を持っている人たちだと思います。情報に対してアクティブで、アンテナを張っている人。感度や共感性が高い人。好奇心があって、トライアルしたいという気持ちを持っている人に、響くものを提案していきたいですね。

「これでいいや」と思うことは、自ら首を絞めることになる

― 今年は35周年です。

松本パルコは地域の皆さんに、非常に受け入れていただいたと思います。その理由の一つは、東京から直接、ファッションや文化を提供するということが評価されたからのではないでしょうか。そして、それが35年続いてきた理由でもあると感じています。

2014年秋の30周年感謝祭
2014年に開催した「30 周年『超』感謝祭」では「松本“今”“昔”写真展」も

― 当時、高校生だった人は50代になっていますね。

変わらず来てくださるお客さまも、買うものは変わってきます。それでも、パルコが提案する感度が高いファッションが好きという声が多い。価格で見れば、決して安い商材ではありません。それでも私たちが提供するテーマを受け入れてくれ、ずっと支持してくださることは大きい。この先も、大事にしていきたいことです。

― 今後は?

ファッション、アート、カルチャーなどをキーワードにしつつ、地域と連動させたイベントも行う予定です。お客さまの期待に応えられるようなテナントの出店をはじめ、ファッションだけではなく、美容関係や食品関係でも「わざわざ足を運ぶ意味」があるものを提供していきたいです。実は、お客さまの割合でいうと、市内は3分の1、塩尻と安曇野を合わせた3市で半分を超えるくらいです。あとは、車で1時間以上かかる距離からお越しいただいている。そうまでするのは、あのブランドがあるから、あの服が、あのコスメが、あのスイーツがあるから。この来店動機が薄まると来なくなってしまう。「地方都市だし、これでいいや」と思うことは、自身の首を絞めることになります。

― 課題と感じていることはありますか?

今、駅前や中心市街地の駐車場は有料でも仕方ないという認識が崩れかけてきています。駐車場の問題はないがしろにはできません。駐車料金がかかるから行かない、加算される前に早めに帰るということを考えなくてもいいように、ゆっくりできる状態をつくりたいですね。

― 確かに駐車料金はできるだけ払いたくない、という気持ちはあります。

1年ほど前から始めた「ぷらパルコ」(※)の反響がいいんです。時間があるからぶらぶらしよう、と思ってもらえるような街じゃないと足が遠のいてしまう。「無料で駐車できる場所で全て間に合わせる」ということが定着したら、街から人が逃げていってしまいます。同じエリアで「買い回り」する良い循環を生み出す第一歩として、取り組んでいきたいと思います。
※パルコカード会員向けに毎週水曜は駐車料金が1時間無料になるサービス。プレミアムフライデーは会員以外も1時間無料になる。

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2014年は、30周年記念としてさまざまなイベントを開催。オープン当日の写真などを展示した「松本"今""昔"写真展」からは、その熱気や盛り上がりが伝わってきた。35周年の今年、そしてこの先、どんな刺激を提供し続けてくれるのか、注目したい。

松本パルコ

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