浅間温泉の「手仕事扱い処GALLERYゆこもり」(松本市浅間温泉3、TEL 0263-46-2066)で現在、陶芸家・田村文宏さん(31)の個展「田村文宏陶展」が開催されている。
田村さんは愛知県出身。2004年に愛知県立瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科を卒業、翌年に同ギャラリーで2人展を開催し、その後ホンジュラス共和国やカンボジアにて陶芸指導を行いながら自身の制作活動も行ってきた。現在は岡崎市の山中に薪窯を設け、日々作品作りに励んでいる。
同展では皿や花器、カップなど200点以上の作品を展示する。作品は白磁や粉引(こひき)、焼締め(やきしめ)など、さまざまな技法や種類のものが並ぶ。「白磁など韓国の焼き物が好き。質感はもちろん、形に作り手のおおらかさが出ているような気がする」と田村さん。手に持つ食器類は軽く、花器などあまり持たないものはほどよい重さを持たせるなど、大きさや重さにもこだわりを見せる。
技法や物によって使う土を使い分け、土それぞれが持つ特徴を生かした作品に仕上げている。「愛知県内で取りに行ける範囲の土を主に使っている。焼いてみて、耐火性や厚さ、相性のいい釉薬(ゆうやく)など研究している」(田村さん)。湯のみには伊賀土を、器には窯の近くにある土と他の土とをブレンドして使っているという。それぞれ、土に含まれる鉄分が固まった玉が表面に現れ模様になっている。鳥や植物の型押しが施された「鳥紋皿」は、あめ色に発色する釉薬「飴釉(あめゆう)」を使用。縁から中央向けて濃くかかり、味を出している。
白磁のものは皿や器、そばちょこ、ポットなど幅広く用意。とっくりは細長いもの、ぽってりとしたもの、小ぶりのもなどさまざまな形がある。「花器としても使ってもらってもいいし、酒器としてでもいい。好きに使ってもらえれば」(田村さん)。窯の中で燃やす薪の灰が作品にかかって溶け、通常の白磁とは違った雰囲気になっているものも展示する。
制作時に割れてしまったという大つぼは、中にもう一つ花器を入れ、青モミジを生けた状態で展示している。「今は大きなつぼを飾るという家庭が少ないから需要も少ない。それでも技量がないと作れないものなので、田村さんみたいな人は貴重」と同ギャラリーの瀧沢一以さん。「大きな作品はまだそんなに作れないが、作っていて楽しいし、迫力があるので作り続けたい」(田村さん)。
田村さんは「端正な器というよりは、素朴で、使っていて気持ちの良い器を作り続けていきたい」と今後の制作にも意欲を見せる。
作品は販売も行う。皿=840~、鉢=3,150円~、マグカップ=2,415円、花器=3,100円~など。営業時間は土曜・日曜・祝日の10時~18時。9月26日まで。最終日は田村さんも在廊を予定。