アルピコ交通上高地線の沿線風景写真集「そこに人がいるから」の取り扱いが7月8日、同線の新島々駅、波田駅、新村駅で始まった。
信州大学大学院総合人文社会科学研究科1年の小林智樹さんが撮影し、自主制作した。表紙は新村駅で、男性に手を引かれた小さな子どもが、男性の指さす先の電車をのぞき込むようにしている瞬間を捉えた写真。ほかに、ホームで待つ学生の姿や、登山客で混み合う車内、稲穂が実る田んぼやヒマワリ畑、運転手や点検する作業員など、さまざまな情景を収めている。
小学3年生の時に写真を撮り始めたという小林さん。当時は地元を走る西武鉄道がお気に入りで、「元々私鉄が好き。より地域性を感じられるところが魅力」と振り返る。大学進学で松本へ移住してからは、上高地線をよく撮っていた。2021年夏、同線の駅などでイベントを行う「しましま本店」の実行委員会に参加したことで、人との縁ができ、愛着がさらに深まったという。昨年3月には、全線開通100周年を迎えることを記念したポストカードセットを企画し発売した。
撮影した写真は個人のSNSに投稿していたが、「何か違う方法で、ちゃんと形として残したいと考えるようになった」と小林さん。4月、沿線にある亀田屋酒造店(松本市島立)で行われた「本の蔵1885〈お座敷一箱古本市〉」に合わせて、写真集を作ることに決めた。これまで撮影してきた中から選んだ写真は、自然に2021年夏以降の作品になったという。
イベント後は市内の書店などでも販売。「高校時代の通学風景で懐かしい」「こんなにきれいに撮ってくれてありがとう」と言う地元の人がいるほか、旅の記念にと観光客が購入してくれることもあるという。アルピコ交通の社員も写っていることから話が進み、同線の駅や同社のイベントでも扱うことになった。今回、写真集でもイラストを担当した榊あきらさんが描いた沿線散策マップを新たに付録として封入。見どころを紹介するほか、写真を撮影した場所も分かるようにしている。
現在は、4駅で配布している沿線の風物や歴史を解説した「読めば上高地線が2割(?)面白くなる旅のしおり」の作成も行っている。しおりの補充も兼ねて週1ペースで沿線に足を運ぶという小林さん。「これからも地域の風景として上高地線の良さを伝えていきたい。人をテーマにすることは変わらないが、今後はそこに何かをプラスしながら、続編を出していければ」と笑顔を見せる。
A5版、48ページ。価格は1,000円。市内の「本・中川」(元町1)、「枯淡苑」(開智2)、「books電線の鳥」(城東1)、「想雲堂」(大手4)でも扱う。