工芸の街・松本の今を見直す「デザイン・キャンプ 松本」

さまざまな意見交換をする発言者たち。

さまざまな意見交換をする発言者たち。

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 「第18回デザイン・キャンプ 松本」が3月28日、松本市時計博物館内・本町ホール(松本市中央1)で開催された。

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 毎年、全国で活動する有名デザイナーを招き、「デザイン」についての講演を行う同イベント。18回目となる今年は、5月に行われる「クラフトフェアまつもと」が25周年を迎えるのにちなみ、「松本の工芸風土について話そう語ろう! 民芸の町に、クラフトの花が繚乱と咲いて」をテーマに掲げた。当日は一般参加者約70人が会場を埋めた。

 イベントは2部構成。1部は日本の民芸活動に生涯をかけた柳宗悦氏に関する映像を上映。「下手もの(げてもの)」と呼ばれていた民衆の日用雑貨を「民芸(民衆的工芸)」と呼び始めた同氏。「用と美を結ぶものが工芸」と説いた同氏の活動や姿勢に、参加者は真剣に見入っていた。

 2部は県内の工芸関係者7人が「工芸の今」について語り合った。松本民芸家具の池田素民さんは「民芸が『生きる道しるべ』だということに、世間が気付き始めている。改めて見つめ直すのはいいこと」と話した。また、よく松本に足を運んでいたという柳氏が、池田さんの祖父であり同社創業者の池田三四郎氏に、民芸のあり方や「ぜひ後世に伝えていってほしい」と説いたエピソードも披露した。

 「工芸の街・松本のあり方」については、さまざまな意見が飛び交った。石材業を営み作家としても活動している伊藤博敏さんは「松本は水にも注目されているが、景観のためだけに電動ポンプ式の井戸を作る現状。やみくもに観光を目的とするのではなく、まずは暮らしを見直すべきでは」と発言。工芸品を扱う店舗を経営する宮原健一さんは「良くも悪くもいろいろ変化してきている。店には『工芸品』ではなく、『手軽な価格のお土産』を求める観光客が多くなった。そのうち、『一番大切なもの』を失ってしまうと思う」と意見した。池田さんは「『形』はそれらしく作ることができるがそうではない。『心』や『人』がこれからの松本を支え、生かしていく」と今後の街づくりへの期待を寄せた。

 最後に、松本デザイン交流会議会長の深澤賢一郎さんは「とても興味深い内容だった。この会は結論を導き出すものではない。この会場にいる人それぞれが、作り手、使い手、伝え手として改めて自身を振り返ってもらえたと思う」と話し、「またこうした機会が持てればうれしい」と締めくくった。

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