今秋、ワイナリーの開業を予定している松本・美ケ原温泉の「追分屋旅館」(松本市里山辺)が、ワイン用のブドウの苗木を植える植樹祭を4月12日、開催した。
美ケ原温泉ではこれまで、各宿が信州産ワインを紹介する飲み歩きイベントを開催。同旅館でも以前から信州産ワインを提供している。ワインツーリズムによる観光誘客、地域振興や関係人口創出を見据え、ワイナリー「ドメーヌ・ド・ユノハラ」を新規事業として、国の事業再構築補助金に申請し、採択された。ソムリエの資格を持つ3代目社長・花岡秀敏さんは「ブドウの生産から醸造まで、『美ケ原温泉産ワイン』を目指し、地域の皆さんに愛されるワイナリーにしたい」と話す。
以前、デラウエアなどを栽培していたが、しばらく休耕地となっていたという約80アールのブドウ畑を同旅館近くに確保した。醸造所は、市内波田にあった築100年を超える蔵を敷地内に移築して改修。スタッフは山形村の「大池ワイン」で研修を受けるなどして、秋の開業に向け、準備を進めている。
植樹祭は、「まずは地域の皆さんに知ってもらいたい」と考えて企画。当日は、地元旅館組合やワイナリー経営者など約10人が参加し、畑の一画にシャルドネの苗木60本を植えた。
今後は、ほかの品種のブドウも植えて、3年後の収穫を目指す。並行して、市内の農家から仕入れたリンゴを使ってシードルを醸造する予定だという。花岡さんは「地域の名物として、外で販売するよりは『ここに来て楽しむ』ことに重きを置きたい。美ケ原温泉全体で活用していければ」と意気込む。