舞台「博士の愛した数式」が2月11日~16日、まつもと市民芸術館(松本市深志3)で上演される。
原作は芥川賞を受賞した小川洋子さんの小説。交通事故の影響で記憶が80分しか持たない元数学者の「博士」と家政婦の「私」、その息子の「ルート」の日々を描く。同館総監督の串田和美さんが博士を演じ、演出家の加藤拓也さんが脚本・演出を手がける。
串田さんは2019年、加藤さんが主宰する「劇団た組」の舞台に出演。同劇団で以前、「博士の愛した数式」を上演したことがあり、「いつか一緒に」という思いが実現した。3月末で退任する串田さんにとって、総監督としては同館で最後の公演となる。
串田さんは、小説が出版されてすぐに読んだといい、「もともと記憶に対する興味があったので、いつか演じてみたいと思った」と振り返る。小川さんは「作家としては仕事が終わっているので、あとは楽しみしかない」と期待を寄せ、「私の書いたものが読者に届き、そこから違う形で表現されてさらに多くの人に届く。私の手元から遠ざかるほど光栄に思う」と話す。
2月5日には、芸術館レクチャーシリーズ「舞台『博士の愛した数式』が生まれるまで」が行われ、小川さんと加藤さんが登壇した。開始10分前に初めて顔を合わせたという2人。舞台化について加藤さんは「小川さんの作品は、表現しているところとしていないところのバランスや、言葉のチョイスが好き。小説の空気感を大事にしたい」、小川さんは「小説は全て見えていても焦点を絞って書いているが、舞台は省いたものも全て見える。脚本にするということは、より深く作品に潜り込んで拾ってこないとできない」と語った。
今月に入り、松本での稽古を開始。加藤さんは、昨年の「FESTA松本」やプライベートで何度も訪れているが、冬は初めてだという。「めちゃくちゃ寒いが、『瑞祥』のサウナのおかげで頑張れる」とも。小川さんは、舞台にはまったきっかけや「推し活」エピソードも紹介。一昨年、同館で「レ・ミゼラブル」を鑑賞したときの印象を「エントランスから客席へ向かうと、異世界へ入っていくような感覚」とし、「松本の町は、ポスターがあちこちに貼ってあって、歩いていて飽きない。町の人たちが応援してくれているような感じがする」と笑顔を見せた。
開演時間は、11日=17時、12日・15日=14時、14日=19時、16日=13時。チケット料金は、一般=5,000円、25歳以下=2,000円。未就学児入場不可。チケットは同館チケットセンター(TEL 0263-33-2200)、チケットぴあで販売する。今月19日~26日に東京公演も行う。