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松本で公共劇場と芸術監督の役割考えるシンポジウム 各地の芸術監督招き

(壇上左から)津村さん、串田さん、宮城さん、多田さん、渡辺さん

(壇上左から)津村さん、串田さん、宮城さん、多田さん、渡辺さん

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 地域における公共劇場の存在と役割について考える連続シンポジウム「vol.1地域における公共劇場の役割と芸術監督の役割」が8月2日、まつもと市民芸術館(松本市深志3)で行われた。

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 本年度末で退任が決まっている同館総監督の串田和美さんが、次代への継承と共に、地域における舞台芸術や芸術劇場の方向性を示唆しようと行う取り組み。全国各地の公共劇場の芸術監督やプロデューサー、芸術文化を支える人々を迎えて語り合う。

 当日は、約80人が参加。串田さんのほか、SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督の宮城聰さん、元富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督の多田淳之介さん、彩の国さいたま芸術劇場ゼネラルアドバイザーの渡辺弘さんが登壇し、信州アーツカウンシルアーツカウンシル長の津村卓さんが進行を務めた。

 宮城さんは、公立劇場として静岡県の文化政策を担い、首都圏への人口流出と教育という2つの問題を解決に近づけることを目標にしたという。「東京を経由しなくても世界と直接つながれる」例としてJリーグを挙げ、教育面では中高生に足を運んでもらえるよう演劇鑑賞教室を実施。「静岡の大人は皆『まとも』。ここから外れてはいけないと思うのはつらい。モノカルチャーではなく多様な考え方を容認することが、地域の強靭(きょうじん)さ、しぶとさを生む」と話した。

 劇団「東京デスロック」を主宰する多田さんは「東京では、劇場=演劇好きが集まる場所、という感覚だったので、富士見市に来て、ボランティアの皆さんが楽しそうにしていることに衝撃を受けた」と振り返る。在任中は月に1回、子ども向けに「遊ぶ」プログラムを開催。その後、アウトリーチに特化した「リージョナルカンパニーACT-F」を立ち上げ、3期にわたって活動を行ったという。

 数多くの民間、公共劇場に関わってきた渡辺さんは、同館の開業準備を回顧しながら、「劇場を含めた『地域をどうしていくか』を考えるためには、エネルギーと行動力が必要。誰かが先頭に立ってやらなければいけない」と力を込めた。約20年、同館に携わってきた串田さんは「(作品を見て)全員が『良い』というのではなく、中には『嫌い』という人がいないと落ち着かない。でも、こういうところで仕事をしていると、『皆に良いと言ってもらわないといけないのでは?』と考えてしまうこともある」と語った。

 シンポジウムは全4回で、次回は12月17日の予定。津村さんは「これまで芸術監督が語り合う機会はあまりなかった。残り3回、何か答えを出すというよりは、一緒に考える場にしていければ」と締めくくった。

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