松本の暮らしや自然、町の店などを紹介する冊子「松本マップ」が5月26日、発行された。
冊子は、タブロイド判で8ページ。書店「栞日(しおりび)」(松本市深志3)のスタッフで、イラストレーターの山本ひかるさんが、松本に1年半暮らす中でコツコツと描きためてきた作品などを一冊にまとめた。
「松本に城はひとつというけれど」と題した見開きページでは、松本城や四柱神社、あがたの森公園などのほか、老舗から新店まで個性ある店舗や、代表的なメニュー、土産物を紹介。「店を眺めていると、店の人とお客さんの愛がこもっているのが分かる。見た目だけではなく、そういう気持ちも表現したい」と山本さん。これまで描いた中から選んでレイアウトしたが、限られた紙面に入りきらなかったものもたくさんあるという。
山本さんの自宅近くにある薄川(すすきがわ)に着目し、自身の暮らしをつづった「薄川通信」や、「薄くない、薄川」というコピーをポスター風に仕立てた「勝手に広告」企画も。「あまり目立たないが、とても魅力のある川。もっと良さを知ってもらいたいと思った」と話す。17の水場の川柳を詠んだ「松本井戸端!!湧水川柳」や、スーパー「ツルヤ」で購入する愛用品をピックアップした「ツルヤのある暮らし」も紹介する。
山本さんは大阪府出身。子どもの頃から絵と文字で表現することが好きだったという。就職を機に上京。不動産・飲食事業を展開する会社で、飲食店の立ち上げに携わったり、店を紹介するチラシや観光マップなどを描いたりしていた。退職後はフリーのイラストレーターとして活動。マップも多数手がけてきたが、一昨年に緊急事態宣言が出された際、気分転換に近所をゆっくりと歩いたことで「町」に対する意識が変わったという。「通勤や目的があって歩いているときは目に入ってこなかった『町の景色』に気付いた。町は、これまで住んできた人、今住んでいる人の意志によって長い時間をかけてつくられたものだと感じた」と振り返る。
地域に根付いた「生活の発信」をしたいと考えていたときに、「栞日」が経営を引き継ぎリニューアルした銭湯「菊の湯」の湯屋チーフを募集していることを知った。「地元の人たちが集う銭湯は、まさに地域に根付いた場所」と応募。採用され、2020年10月、松本に移住した。
「冊子には、松本で暮らしたことをぎゅっと詰め込んだ。細部まで見てもらいたかったので大きいサイズになった」と山本さん。来月には東御市に引っ越すことが決まっている。「これからも、絵と文字で伝えることを続けていきたい」と笑顔を見せる。
価格は1,100円。栞日とゲストハウス「tabi-shiro(タビシロ)」のほか、オンラインショップでも販売する。