山岳カフェ「アルパインカフェ満寿屋(ますや)」(松本市安曇、TEL 0263-87-8216)が松本市安曇・島々地区の島々郵便局向かいにオープンして1カ月が過ぎた。
店舗面積は約18坪、席数はカウンターとテーブルで6席。1829(文政12)年築という土蔵を改修した店内には、ピッケルなどのギア類や、明治、昭和時代に使われていたという登山道具や木こりの道具などを飾る。山にまつわる書籍も多く、中には上高地に続く徳本峠の入り口として栄えた島々宿について伝える資料も。店主の山口浩喜さんは「昔の道具を知ることで、時代を見つめ直し、便利な今の時代の課題を考えるきっかけになれば」と話す。
コーヒー(500円~)は市内のロースター3店のものを提供。粉の状態で用意し、香りで選ぶことができる。日本茶、ほうじ茶(以上300円)などのほか、生ビール(550円)などのアルコールも。「お酒が飲める店ができて、地域の人たちは喜んでくれている」と山口さん。1日10食限定の「ビーフシチューのセット」(1,500円)のほか、北アルプスの岩稜の名を付けたチーズケーキ「ジャンダルム」(500円)などデザート類も用意する。
山口さんは20年ほど前に都内から松本へ移住。その後、車中泊をしながら「プチキャンプ」を始め、徐々にアウトドア用品から本格的な登山用品をそろえるようになっていった。「来たばかりの時は山の名前を覚える気もなかったのに、少しずつ興味が湧いていった」と振り返る。道具が増えたため、広い家を探し始めたがなかなか見つからず3年ほどが過ぎた。
2018(平成30)年4月、上高地の開山祭に合わせて涸沢へ向かい、その帰りに島々郵便局に立ち寄った際に、この蔵が目に留まった。帰宅後、不動産サイトで、2つの蔵と母屋の情報を偶然見つけたという。「こういう雰囲気の場所もいいなと感じた直後だったので、何か縁を感じた」。当初、カフェを始めるつもりはなかったが、蔵の中を片付けるうちに、棟木に「文政12年」の文字を発見し、島々地区の歴史を調べるほど興味は深まった。「店を始めることで人が集い、にぎわいも生まれる。ここなら、山のことを知っている住民と登山者の交流も楽しいはず」と一念発起。クラウドファンディングを実施するなどして、準備を進めてきた。
新型コロナウイルスの影響や、峠道の落石などで開業時期を模索する中、7月には、環境省中部山岳国立公園管理事務所と中部山岳国立公園パートナーシップを締結。地道な作業をこつこつと続け、オープンにこぎ着けた。2階は現在も改装中で、一部はディスプレースペースにしたいという。「歴史や文化に興味を持ってくれる人が増えることで、島々宿が復活したり、『島々』というブランドが生まれたりすれば面白い」と意気込む。
営業時間は11時~18時(金曜・土曜は21時まで、日曜は17時まで)。月曜~水曜定休。