呪文とキャンドルを販売する「呪文、売ります」が10月、安曇野の「SHITEKI NA SHIGOTO Gallery(してきなしごとギャラリー)」(安曇野市穂高有明)、松本・駅前大通りの文具店「ink stain/NiB(インクステイン/ニブ)」(松本市中央3)で行われる。
12種類の効能から1つを決めてオーダーすると、詩人・ウチダゴウさんが呪文をハンドライティングしてくれる。その後、キャンドル作家・西牧隆行さんが調香・制作したフレグランスキャンドル4種類の中から、呪文を唱えるときに包まれたい香りのするものを選ぶ。
キャンドルは、「呪文売り」という世界観に合わせてテーマを設定。西牧さんは「店とのコラボでオリジナルキャンドルを作ることは多いが、クリエイターとのコラボはあまりない。自分の外側から与えられる想像力で作る機会を、自分自身も楽しみながら、『ごっこ遊び』の大人版に本気で真剣に取り組んでいる」と話す。香りは、祈祷(とう)師、占い師、魔女、賢者をモチーフに据え、それぞれのキャラクターの性質を言語化し当てはめてブレンド。ミステリアスな雰囲気を壊さないように意識しつつ、極端に個性的にならない、キャンドルとして日常使いできるバランスを狙っているという。
呪文は、ウチダさんが世界の古語などから言葉を練り上げて書いている。「詩を書くときに考える『もしこの詩が読者の一助になるのであれば、詩が救うのではなく、詩を読んだ本人が自分を救う、そのきっかけになるようなものであってほしい』という心持ちは一緒。詩も呪文も、消費するのではなく、そばにあることで、自らエンパワーメントしてもらえれば」と話す。
2014(平成26)年秋に初開催して以降、野外イベントや県外でも展開した人気企画。昨年はコロナ禍で、オンライン販売のみ行った。ウチダさんは「呪文を買う、という時点で既に怪しいイベントだったのに、それがクリック一つで宅配されることが、怪しさが増して面白かった」と振り返る。
今年は2会場とオンライン、どちらも行うことにした。「リアルは幻想の世界が現実に染み込んでくるのをゆっくり体感できるし、オンラインは日常に幻想の世界が突然現れるサイケデリックな体験ができる。呪文という幻のようなものが、目の前の現実にじわじわと存在していくのを、より感じてもらえるようにしたい」とウチダさん。西牧さんは「怪しさ満点の空間づくりや、呪文や香りを選ぶ時間も楽しめるのがリアル開催の面白さ。参加できる人はぜひ、『呪文屋』のドアをその手で開いてほしい」と呼び掛ける。
「SHITEKI NA SHIGOTO Gallery」は、10月24日と30日。「ink stain/NiB」は予約制で10月31日。いずれも16時30分~22時。オンラインは10月17日までオーダーを受け付ける。料金はいずれも3,500円。