松本・浅間温泉で進められているホテル再生を中心にしたエリアリノベーションプロジェクト「松本十帖(じゅうじょう)」の一環として、書店を併設したブックホテル「松本本箱」(松本市浅間温泉3)が7月23日、プレオープンした。
創業約340年の老舗旅館「小柳」を大規模改修。客室数は24室で、全室に温泉露天風呂を備える。宿泊者以外も利用できる書店は、雑誌から小説、漫画、絵本など約1万冊を扱う。選書は日本出版販売の「YOURS BOOK STORE」と、ブックディレクターの幅允孝さんが代表を務める「BACH(バッハ)」が担当。アート関連の書籍を中心にした「オトナ本箱」、迷路のように本が並ぶ「こども本箱」は、それぞれ入り口に大きなのれんが掛かり、改装した大浴場の湯船を改装して座れるようにしている。地元の食材を使った料理を提供するダイニングレストラン「三六五+二」には食関連の書籍をディスプレー。客室や廊下にも本棚を置き、宿泊者が自由に読めるようにしている。
宿泊受付を兼ねるコーヒースタンド「おやきとコーヒー」では、定番や季節のおやきのほか、コーヒーや日本茶を提供する。地元住民専用の共同浴場「睦の湯」として使われていた建物を改装。以前、同温泉の芸者の休憩室となっていた2階には、ソファなどを置き、くつろげる空間に仕上げた。スタッフの小沼百合香さんは「共同浴場を利用した後に立ち寄っていただくなど、地元の皆さんにも利用してもらえてありがたい」と話す。
経営は、雑誌「自遊人」の発行、宿泊施設「里山十帖」などを経営する「自遊人」(新潟県南魚沼市)。新型コロナウイルスの影響で、当初予定していた4月から延期してのオープンとなった。岩佐十良社長は「ウィズコロナ」の時代として、周辺への感染防止をできる限り心掛けた上での旅を呼び掛けている。
「松本十帖」は、「松本本箱」を含めた複合施設で、今秋以降、もう一つの宿泊施設「ホテル小柳」のほか、ハードサイダー醸造所や長屋を改装したブックカフェ「哲学とあまいもの。」を順次オープンする。現在、宿泊者限定としているダイニングレストランも10月頃には食事のみの利用ができるようにする予定。小沼さんは「地元の方がふらりと訪れたり、宿泊者が温泉街を歩いて新たな発見をしたり、街全体を楽しんでもらえれば」と話す。
書店の営業時間は12時~22時ごろ(宿泊者は随時)。