木工作家・大曽根俊輔さんの個展「動物の乾漆(かんしつ)彫刻」が現在、松本・筑摩の「ギャラリー石榴(せきりゅう)」(松本市筑摩2、TEL 0263-27-5396)で開催されている。
牛やミニブタ、バク、ペンギンなど8点の作品を展示する。新作のミニブタ2点は、横になっている姿と、座っている姿で、アルプス公園(蟻ヶ崎)にいる「チャコ」がモデル。大曽根さんは「ヤギがいっぱいいる中で一頭だけどっしりとした存在感。見に行くと、だいたい寝ている姿で、座っているほうが珍しい」と話す。同じく新作の牛2点は、知人の酪農家のホルスタインで、「立っていても座っていてもいい。ボリューム感がある」。知人に「黒光(こっこう)」と名付けてもらったという。
乾漆は、型の上に漆で麻布を張り重ねて固めていく技法。大曽根さんは、粘土で肉付けをした骨組みに麻布を張り重ねた後、粘土や骨組みを取り除いて張りぼてを作り、木の粉などを漆に混ぜたものを塗って形を削り出し、彩色して仕上げる。動物の姿は、写真や動画も参考にしながら、実際に動物園や水族館へ通ってデッサンを重ねている。「魂を入れる、というわけではないが、中に毛や羽を入れた作品もある」と大曽根さん。制作途中の作品を持ち帰り、枕元に置いて過ごすこともあるという。「ふと、動物園にいたときのにおいを感じたり、鳴き声が聞こえたりすることもある」とも。
大曽根さんは、武蔵野芸術大学工芸科で木工を専攻。東京芸術大学大学院修士課程で文化財保存学を学び、卒業後は京都で仏像の修復に携わってきた。2015年に松本へ移住。中山で「工房茶虎」を構え、木工作品の制作や金継ぎ修理や教室などを行っている。
同ギャラリーの薄井みゆきさんが、2017年の「工芸の五月」の企画展で作品を見て展示を依頼した。「動物のたたずまい、全体の雰囲気に魅力がある。さらに、彫刻作品として、360度どこから見ても見応えがあるし、もっと細部までじっくり見てもらいたいと思った」。先月は東京でも展示会を開催。「乾漆という技法に興味を持ってくれる人も多い。インパクトがあるし、新たな美術作品との出合いになったのでは」
「工芸の五月」の企画展がきっかけで、大曽根さんの作品は市内の商店などでも展示されたが、今回は「美術作品として見てもらいたい」と、小型のものは展示台の上に置いた。大曽根さんは「いつもよりシャンとしてキリッと見える。町中で見たのとは少し違った雰囲気で楽しんでもらえれば」と笑顔を見せる。
営業時間は10時~18時。月曜・火曜定休。5月26日まで。