松本・六九商店街にある和紙専門店「紙館 島勇」(松本市大手2)の役員で和紙人形作家の伊藤叡香さんが制作し、フランスの国際公募展「ル・サロン」で入選した和紙人形が4月、松本市と長野市で「凱旋(がいせん)展示」される。
入選した作品は「光源氏 紅葉賀(もみじのが)」。明るい若草色の装束をまとい、光源氏が片足立ちで動き出そうとする姿を表現した。大きさは高さ約62センチ、幅約55センチで、針金と粘土で成形。和紙は15種類ほどを使い、貼り合わせているという。45年間制作を続けている伊藤さん。「和紙の作品を募るコンテストに出したことはあるが、美術・アート作品として応募したのは初めて」と話す。
同展は、350年の歴史を持つ世界最古の国際公募展。絵画や彫刻などの部門で写真審査を通過した作品が展示され、現物の審査を経て入賞が決まる。日本からの出展は通常、代理店を経由することが多いというが、2年ほど前、伊藤さんの長女・山崎夏菜さんに勧められ、渡仏経験のある夏菜さんや友人の協力を得て個人で持ち込んだ。「日本から個人で応募したのは初めてだと思う。入選と聞いた時は皆で喜んだ」
作品は、2月15日~19日にフランス・パリの国立グランパレ美術館で展示された。「彫刻部門」での入選だったため、石や金属を用いた彫刻作品が並ぶ中、異彩を放っていたという。「興味深く見てくれる人もいれば、何だか全く分からないという反応の人もいた」と伊藤さん。「それでも、日本文化の一つとして海外で紹介できたことはうれしい」と笑顔を見せる。
同作品は、毎年恒例の和紙人形作品展でも展示する。「三国志英雄譚(たん)」と題した今回のテーマは「三国志」で、松本市と初めてとなる長野市の2会場で開催。伊藤さんの作品10点と、主宰する和紙人形教室の生徒作品も展示する。「和紙の作り手が減り続ける中、もっと多く人に和紙の良さを知ってもらう機会になれば」
展示は4月6日~9日に山形村のアイシティ21で、15日~23日に長野市のSHINKOJIホールで行う。問い合わせは島勇(TEL 0263-35-1000)まで。