松本・高砂通りの「村山人形店」(松本市中央2、TEL 0263-32-1770)で現在、「浜染工房 藍染展」が開催されている。
反物や帯をはじめ、テーブルセンター、タペストリー、ブックカバーなどの小物も含め、100点近くを展示する。作品は型紙を使って、全ての工程を手作業で行う「長板染」と呼ばれる藍染め。生地の表と裏を違う模様で染め上げる「長板中形染」や、すすを使って灰色に染める「松煙染」のものも。藍色と、「松煙染」の灰色、炭を使った黒色の3色を組み合わせ、裾に向かって薄色から濃色になるよう仕上げた反物や「松煙染」のクラッチバック、繊細な素材のストールなどが並ぶ。
浜染工房(庄内2)は、1911(明治44)年創業。現在は、3代目・濱完治さんが全ての行程を手作業で行っている。生地を板に張り付けて型紙を置き、その上からのりを数回塗り重ねた後、豆汁(ごじる)を塗り藍で染める。「『のり置き3年、のり8年』と言われるが、いまだに失敗することもある」と濱さん。藍染めを始めて50年近くになるが、始めの15年ほどは2代目の父・岸治さんに朝から夜中までのり置きを習ったと振り返る。「基礎はやり過ぎるというものではないと、身を持って感じている」
同店の村山謙介さんが「松本の良いものを紹介したい」と企画。同店で飾っているのれんや、端午の節句に飾る「武者絵のぼり旗」を使ったバックの染色を濱さんにお願いした縁があり、呼び掛けた。「本当に素晴らしい技だと感じられる作品ばかり。すごい職人さんが身近にいることを知る機会になれば」と村山さん。
来場者の中には、着物姿の人や、「いつも車で工房の前を通るので気になっていた」という人も。母から受け継いだという帯を、濱さんが見て、「これは、うちで染めたもの。何十年たっても染めたものは忘れない」と言う場面も見られた。
作品は一部販売する。価格は、着尺=12万円~、テーブルセンター=2,400円~、ストール=1万2,000円~、クラッチバック=1万3,000円~、タペストリー=2万円~。営業時間は10時~18時(最終日は17時まで)。11月28日・29日は濱さんが来店する。同29日まで。