松本カタクラモール(松本市中央4)を中心にした再開発計画について、まちづくりの観点から考えるシンポジウムが6月10日、県松本勤労者福祉センター(同)で行われた。
再開発計画をめぐっては、5月27日、イオンモール(千葉市)が片倉工業(東京都)から社有地6.25ヘクタールを賃借して「イオンモール東松本」(仮称)を2016年秋に出店すると発表。「松本市の目指すまちの姿と開発計画に対する考え」に基づき、景観や街並みに配慮して計画を進めるとし、城下町の町屋をイメージした外観の専門店街を含めたパース図も公開した。
シンポジウムには、約200人が参加。市民団体や松本商工会議所、市の代表などをパネリストに迎え、再開発についての意見を交わした。パネリストからは、「商業施設の出店を拒んでいるわけではない」としつつも、地元の声を聞き、まちづくりの観点に配慮した開発が行われるかどうかについては不安があるとの声が多く上がった。松本商工会議所の胡桃沢宏行専務理事は、中心商店街や周辺の大型店の衰退・撤退や交通状況の悪化を予測し「現状規模程度の開発には賛成だが、超大規模開発は大きな懸念がある」と話した。
イオンモール側から発表されたパース図については、町屋のイメージや「クラフト」と書かれた建物があることなど触れ、「通り一遍のものではなく、街に配慮している感じは受けた」「町屋というのは松本のイメージとは違う。松本のことをあまり知らない人が描いたという印象」「手前の町屋風の建物に目が行きがちだが、背後のモール部分についてはまだほとんど分からない」などの意見が上がった。
最後に参加者から意見や質問を募ると、多くの人が挙手。「地元の人たちが声を上げることで、再開発の方向性は変わるのか」という質問には、「まずは市民の声が大切。そこを行政や商工会が一緒に後押ししていく」と答えが。コーディネーターを務めた信州大学経済学部の武者忠彦准教授は「再開発の規模と質について、事業者と市民、そして行政がトライアングルになって考えるというのは全国でも類を見ない。松本市民としてのプライドを見たい」と締めくくった。