松本・中央にある老舗旅館「いちやま」(松本市中央2)跡に7月1日、松本衣デザイン専門学校(TEL 0263-32-4057)が移転した。
75年の歴史を持つ同校。その信頼から、数年前に高度専門士の資格を取得できる4年制の「テクニカルMDコース」を新設したが、同課程の設置基準である生徒一人当たりの面積が足りなかったため、広い校舎を探していたという。「郊外ならたくさん広い建物があるが、ファッションビルも多い『花時計公園』の近くが学生のためにもいいなと思っていた」と太田正子校長。昨年7月ごろ、当時の校舎から100メートルほど先の旧旅館の建物を紹介され、移転を決めた。「こんなに近くに理想の物件があったなんて」と太田校長は笑う。
建物は江戸時代から続いた老舗旅館の跡で、旅館は2002年に松本市都市景観奨励賞を受賞している。2007年に閉館、その後は別の会社が宿泊施設や飲食店として利用していたこともある。今回、各階3~4部屋あったものを、一部壁を取り払い2部屋に改装、使えるものはなるべく残すようにしたという。「素晴らしい調度ばかりだったので、捨てるのはもったいないと思い、譲ったり親がいない子どもを支援する団体に寄付したりした」
地上7階地下1階の新校舎。1階には受付のほか、生徒が制作した服をメーンに販売するセレクトショップ「[i]design club shop」を開設。3階と4階の衣服製作室には、40~50年ほど前の足踏みミシンが並ぶ。「ずっと使ってきたもの。今の電子ミシンは多くの人で使うのに向かない。年代物のミシンは、職人さえいれば100年でも使える」。新校舎はエレベーターも完備。ユニバーサルトイレも新設し、車いすの生徒も入学できるよう設備を整えた。
学生は1階の同セレクトショップで販売や店の運営方法なども学んでいる。ビジネス科の斎藤由希子さん(19)は、「自分が在籍しているときに移転するとは思わなくてびっくりしたが、新しい校舎で学べるのでラッキーという気持ちもある」と話し、「引っ越し作業も自分たちでやったので、思い入れのある学生生活が送れそう」と笑顔を見せる。
同店の営業時間は13時~19時(土曜は12時~、祝日は17時まで)。水曜・日曜定休。古着の売り上げの30パーセントは東日本大震災の被災地へ寄付する。