松本・中町通りの「松本市はかり資料館」(松本市中央3、TEL 0263-36-1191)の敷地内に2月11日、老舗材木問屋「三松屋」(旭1)にあった蔵を移築再生した「旧三松屋蔵座敷」がオープンした。
蔵は1894(明治27)年の築。2001年、三松屋7代目当主の三原彰さんが松本市に寄付し、2008年に「蔵のある街」として展開している中町に移築することが決定。2009年11月から約1年かけて整備を行い、同館施設として公開することになった。建築当初の設計・施工は、擬洋風建築の手法で活躍したとされる立石清重さん。重要文化財旧開智学校や旧松本裁判所を手掛けた大工棟梁(とうりょう)で、同蔵は最晩年の作。立石さんの建築物は現存しているものが少なく、個人所有の建物は特に珍しいという。
蔵座敷は土蔵造り瓦ぶきの2階建てで、約26坪。同館の第3展示室として使用する。1階は和室、2階は洋間という、和と洋を融合させた造り。2階の洋間は、アールヌーボー建築様式によるゆるいアーチ状の入り口や、繊細な唐草模様、上げ下げ式のガラス窓など、「文明開化」を思わせるデザインが特徴。床板はそのまま使っているため、当時の釘穴が残った状態になっている。
現在2階では、民芸作家で「松本民芸館」の創設者・丸山太郎さんによる収集物などを展示する企画展「中町・民芸・丸山太郎」を開催している。「丸山さんが中町について記している文献も展示した。『蔵のある街』として展開し始める10年も前に、丸山さんは土蔵造りの残る街としてやっていくべきだと提案している。『蔵』という宝物を大切にしていきたい」と同館の田中健太郎さん。
「松本を知ってもらう講座や企画展を開催し、『旧三松屋蔵座敷』を有効活用していきたい。子どもにも博物館に親しんでもらえるように、昔の遊びや紙芝居なども行っていきたい」とも。
開館時間は9時~17時(入館は16時30分まで)。入館料は大人200円、中学生以下無料。月曜定休。「中町・民芸・丸山太郎」展は3月6日まで。