安曇野市のギャラリーカフェ「アザレアギャラリー」(安曇野市穂高有明、TEL 0263-81-5180)で現在、川上桂司さん・千尋さん・正洋さんの親子3代にわたる手ぬぐい展「染絵手ぬぐいの世界」が開催されている。
縦に10個並んだひらがなの「い」を「し」がつなぐ姿を藤に見立てた「いとし藤」
東京・浅草で老舗手ぬぐい店「ふじ屋」を営む川上さん一家。ギャラリーには3人がデザインした手ぬぐいが120種類以上並ぶ。江戸小紋や動植物の柄が全体に散りばめられたもの、1枚の中に大きくデザインされたものなどさまざま。同じ「雪」モチーフでも、結晶が描かれたものや舞台の上から降る紙の雪をデザインしたものなど、表現方法も多彩。縦に10個並んだひらがなの「い」を「し」がつなぐ姿を藤に見立てた「いとし藤」や、紺地に目だけを描いてクジラに見立てた「め鯨」など、ユニークなネーミングのものも。
江戸時代の絵師・山東京伝が主催した手ぬぐいのデザインコンテスト「手ぬぐい合わせ」の出品作をまとめた版画集「多南久ひ阿は勢(たなくひあはせ)」の中から桂司さんが復刻した作品も。「京伝手拭」(作=山東京伝)は愛嬌(あいきょう)のある男がのれんの裏から芝居をのぞいている姿を描いたもので、桂司さんが「最高傑作」と太鼓判を押す作品。そのほか2枚表裏に合わせると一つの傘の絵になる「蛇の目傘」(作=鳴滝音人)など。同展では桂司さんが復刻した21点の中から6点を展示する。
「川上さんの手ぬぐいは川上さん自身が厳選した素材・染料を使用しているので、一般的なものに比べて退色が少なくてとても丈夫。自分が使っているものはもう7~8年たつ」と同店の宮島政名さん。手ぬぐいは、原画を形彫師が渋紙に写して型紙を彫り、紗張り職人が絹紗(目の粗い薄い絹の織物)を張る。最後に染工職人によって染められて完成する。職人から泣きが入るほど、細かなこだわりを持っていた桂司さん。生前、「京伝に対して恥ずかしいものは作りたくないから、譲らない」と話していたという。
毎年7月に開催する同展は今年で7年目。「毎年楽しみにしてくれているお客さんがたくさんいる。最近は若い人も多い。開く方も楽しみ」と宮島さん。「実際に使ってもらうと、生活がより楽しくなると思う。大きな柄のものもあるので、ぜひ広げて見ていただければ」とも。
作品はすべて販売も行う。手ぬぐい=977円~1,680円、ハンカチサイズ=735円。営業時間は10時~17時。金曜定休。7月29日まで。