「マツモト建築芸術祭」が2月23日、開幕した。
3回目となる今回は、移転に伴い取り壊しが予定されている松本城公園内の旧市立博物館、市立博物館、信毎メディアガーデンの3カ所で開催。国内外17組のアーティストの作品を展示する。
メイン会場の旧市立博物館は、建物全体が梱包(こんぽう)材の透明なフィルムで包まれている。中島崇さんが会期中にも制作を続ける作品「ケア」で、1967(昭和42)年に竣工した同館と市民や観光客の間には長い歴史があり、縛ることと保護することで、不安と安心を表現。「場所を再考する機会になれば」と考えたという。
吹き抜けのエントランスホールには、長さ8メートルのカラフルな紙筒を天井からつり下げた鬼頭健吾さんの作品「lines」を展示する。長年使用されていた同館の展示ケース内に置かれた発光する大きな2つのボトルは磯谷博史さんの作品「花と蜂、透過する履歴」。中には蜂蜜が入っているため繊細な温度管理が必要で、館内にケースが残っていたことで展示が実現した。
熊野寿哉さんの「パンタレイ」は生け花作品で、会期中に成長と劣化が進み、最後は腐朽することを想定。取り壊すことが決まっている会場に合わせ、「万物流転」の思想を込めたという。藤井フミヤさんは、1993(平成5)年にソロ活動を始めた当初に手がけたCGアート3作品を出品する。
地下のボイラー室では、河合政之さんがインスタレーション作品「三元素」を展開。ケーブルを張り巡らせた空間に、「ヴィデオ・フィードバック」という手法で作られた映像を流し、変化する色や形、音を作り出している。
過去2回は、有名無名問わず町中にある「名建築」を会場に、「アートを持ち込むことで、建物自体の価値を見つめ直す」ことをテーマにしていたが、今回は取り壊されてしまう場所をメイン会場にした。総合プロデューサーを務めるアートディレクター・おおうちおさむさんは「『建物を残したい』という思いがあったこれまでとは真逆で、取り壊される前に、どれだけ記憶に刻み込むことができるか。これまでとは違う使い方に、いろいろな驚きがあるはず」と話す。
旧市立博物館の開館時間は10時~17時。料金は、一般=2,000円、高校・大学生=1,500円、中学生以下無料。3月24日まで。ほか、期間中に市立博物館では階段スペースでショートフィルムの上映(鑑賞は無料)、信毎メディアガーデンではワークショップとその成果の展示を行う。