美術作家・井上唯さんによる展示「ITONAMI 風景に向かって旗をかかげる」が現在、松本市のギャラリーカフェ「ギャラリーノイエ」(松本市大手3、TEL 0263-87-7077)で開催されている。主催は信州大学人文学部芸術ワークショップゼミ。
井上さんが8~10月、「信濃大町アーティスト・イン・レジデンス2023」として大町市に滞在して制作した作品を展示する。作品の旗は、縦2メートル、横7.5メートル。その土地で使われていた布を集め、地域の人たちと一緒に手縫いしたりミシンで縫い合わせたりした。北アルプスの稜線や田畑も刺しゅうで表現されている。10月には市内にある小熊山へ登り、山頂で旗を掲げた。「人の営みと自然の営みが合わさって風景なることを感じた」と井上さん。制作や山へ登る様子を紹介する写真や映像も用意する。
同ゼミが2008(平成20)年から毎年行っている、アーティストを招いた企画展。今回は「環境」「暮らし」「地域」などをイメージして検討し、井上さんに依頼したという。展示、広報、企画、レビューの4つのグループに分かれて、準備を進めてきた。広報を担当する同学部哲学・芸術論コース3年の八木瑞希さんは「作家と一緒に展示を企画する機会はなかなかない。『見せる』側として取り組んだことで今後、『見る』側としても、違った見方ができると思う」と話す。
アンソロジー「旗をHIROGERU」は、学生らが旗に関するエピソードについて振り返り、ゼミ内で意見交換したことを基にして制作。小学校で国旗や学校旗を掲揚したことや、映画やマンガに登場する旗、沿道で振られる手旗、大漁旗、お子様ランチの旗などから、井上さんの作品について考えを深めてきた。
会期中は、会場内にスペースを設けて旗作りのワークショップを行うほか、23日には旗を掲げて井上さんと一緒に町を歩くイベント(11時~)や、アーティストトーク(14時~)を予定する。「今回は町の中での展示。大町とはまた違った風景を見られることが楽しみ」と井上さん。八木さんは「学生の企画なので、普段、『芸術はちょっと難しい』と思っている人も気軽に参加してもらえれば」と呼びかける。
開催時間は11時~17時。12月26日まで。