長野県内各地の新しい動きや希望の兆しなどを紹介する地域探訪誌「涌出 wakiizu」が9月30日、創刊した。
地域性、独自性、寛容性、波及性、継続性の5つの視点から適した地域を「涌(わ)き出(い)づるスポット」として紹介する。創刊号では、木曽谷で地域おこし協力隊制度を活用して移り住んだり、つながったりして地域の資源を発掘・発信する人々を取材。加えて、「小布施若者会議」をきっかけに世代継承が進む小布施、2つのミニシアターが地域と人を結ぶ上田、森と暮らしをつなぐ「やまとわ」が拠点とする伊那の3地域をピックアップする。活動を知った人が現場を訪れる際に役立つようにと、各地域のマップも載せる。
発行は、有限責任事業組合(LLP)「涌出 WAKIIZU」(松本市深志3)。編集デザイン・出版レーベルとして、同誌を手がけるほか、出版活動や出版物の販売も行う。代表を務める「栞日(しおりび)」(同)の菊地徹さんは「信州に軸足を置きつつ、他地域のさまざまな動きとの学び合いを促し、これからの時代を生きるための『多様な解』を発信していきたい」と話す。
菊地さんは2013(平成25)年8月、書店「栞日」を開業した当初から、「出版」への思いを抱いていたという。「良いローカルには、媒体となる良い出版物がある。松本、もう少し広げて長野県内にも、多くの人に知ってもらいたいコンテンツがたくさんあるのに、メディアがないことがもどかしかった」。店ではローカルにスポットを当てた書籍を多く扱っていたが、宿泊事業や銭湯経営など事業拡大に伴い、「正直に言えば、そこまで手が伸ばせる状況ではなかった」と振り返る。
2021年12月、知人でデザインディレクター・ローカルコーディネーターの瀧内貫さんに「社内が難しければ、社外という手もあるのでは」と背中を押され、一緒にメンバーを検討。富士見町在住のフリーランスエディター・増村江利子さん、木曽町在住のデザイナー・蒲沼明さんと4人で今年1月、同組合を立ち上げた。
取材は4人のメンバーのほか、地域で活動するライターやカメラマンも参加して進めている。「同じ地域で暮らしているからこそ、察することができるものがある。ローカルにいるクリエーターにとっても、新たな拠点を持つことで活動の幅が広がるはず」と菊地さん。今後、同誌は年1回の定期刊行を予定。「10年後、次世代が次のアクションを考える時に、長野県のアーカイブとして活用できるものを目指したい」と意気込む。
価格は1,760円。書店「栞日」のほか、オンラインでも販売する。