松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-3400)で3月20日より、70歳以上を対象とした公募展「老いるほど若くなる」が行われている。
同展の応募条件はただ一つ、「70歳以上であること」。応募者332人、応募総数437点の中から入賞・入選作90点を展示。作品は日本画、油彩、水彩、版画、ミクストメディア、コンピューターグラフィックスなど多岐にわたる。
20日には同館学芸員による「ギャラリートーク」が行われた。30人ほどの参加者の中には、翌日の授賞式を控え、県外から駆け付けた入賞・入選者の姿も。審査員賞・サトウサンペイ賞を受賞した神奈川県の高橋秀治さんの作品は、テーブルの上の白い陶器と花を描いた静物画。「これだけ大きいサイズ(30号)のものは生まれて初めて描いた。写真よりもリアルに、実物よりも美しくと心がけた」と制作時を振り返った。
同館学芸員の武藤美紀さんが、技法だけではなく作品搬入時のエピソードなども交えて解説。最高齢・99歳の田中文一郎さん(大町市)の作品「冬の大町郊外」の前では「実は明日(21日)、田中さんは100歳の誕生日を迎えます。搬入時には息子さんとお孫さんが一緒に持ってきて、そのときに作品のタイトルを決めていました」というエピソードが語られ、参加者からは感嘆の声と笑顔があふれた。
同展は2004年に始まり、今回が3回目。故・米倉守前館長が「松本らしさ」を出せる企画を考えたときに、「信州は高齢者が多い。高齢者が絵を描くことで元気を発揮できれば」と発案。当初は3年に1度の開催だったが、今回から2年に1度とした。
「家族の支えがあってこそ描けるのだと思う。だからこそ、絵の中に人間的な温かみが出るのでは」と武藤さん。「若い人にぜひ見てほしい。年をとっても、こういう絵を描いている人がいる、生き生きと楽しんでいる人がいるということを感じてもらえれば」と話す。
開館時間は9時~17時。入場料は、大人=600円、大学生、高校生、70歳以上の松本市民=300円、中学生以下無料。月曜休館(5月4日は開館)。5月6日まで。4月21日、5月1日は無料開放日で、すべての展示室が無料になる。「ギャラリートーク」は4月11日、25日にも行う。