文化芸術や地域社会の発展において避けられない課題として気候変動や気候危機について学び、考えるフォーラム「気候変動時代、未来を創造するアート・アクション」が3月1日、信毎メディアガーデン(松本市中央2)で行われた。
昨年6月に発足した文化芸術の中間支援組織「信州アーツカウンシル(AC)」と信州大学人文学部が連携。来年度実施予定の「脱炭素・循環型社会を引き寄せるアートアクション」事業のキックオフと位置付けて開催した。
前半は、県環境保全研究所自然環境部主任研究員の浜田崇さんが、県内の気候変動についてデータを用いながら解説。インディペンデント・キュレーターで信州ACのアドバイザリーボードのロジャー・マクドナルドさんは「気候危機に対するアートの行動」と題して、世界各地や、自身が携わる佐久市望月の事例に触れながら、アートという角度から何ができるか、その可能性を示唆した。
後半は、参加者が4つのグループに分かれてディスカッションを行った。現在の取り組みについて紹介するアート作家や劇団員のほか、日常生活で心がけている環境対策を話す人や、「3.11」を機に考えや行動が変化したという人も。中には、「環境問題と言われて久しいが、まだどこか自分事として捉えられていない」「経済的に余裕がない中では、環境への配慮は困難」という声もあった。
その後は、各グループの様子を交えながら、緩やかにトークセッションに移行。信州大学人文学部の金井直教授、ロジャーさん、NPO法人アイダオ(上田市)の直井恵さん、進行を務めた信州ACゼネラルコーディネーターの野村政之さんの4人が、現在の取り組みや今後に向けた期待について語った。「環境というと、理系寄りに聞こえるかもしれないが、アートという響きの中で向き合い、果たせる役割があると感じている」と金井教授。直井さんは自身が携わる「うえだ子どもシネマクラブ」での経験を踏まえ「継続することで、さまざまなことがつながっていく」と話し、野村さんは「地域ごとに多彩な事例と知恵がある。文化芸術が媒体となっていける希望的なイメージを抱いている」と力を込めた。
2023年度は、「Shinshu Arts-Climate Camp」として、文化芸術と気候について学び合う場を設け、環境コミットメントとしてまとめることを目指す。信州AC長の津村卓さんは「アートと環境が結び付くイメージを持っていない人も多いかもしれないが、それぞれが互いに関わり合っていることを感じることで、意識は変わる。いいスタートになったのでは」と話す。