塩尻市の特産品のブドウ「ナイアガラ」を使った発泡酒「ナイアガラホップ」が現在、先行販売されている。
市内の農家が栽培したナイアガラを使い、1600本を用意する。市在住・勤務の有志が中心となり立ち上げた「ナイアガラプロジェクト」が、委託醸造した「南信州ビール」(駒ケ根市)と試飲会を開き、「ナイアガラ特有の香りや味わいを表現したい」と果汁の割合や使用する酵母について検討。ナイアガラの香りが立ち、ホップや麦芽の苦みを感じる甘過ぎない味わいに仕上げた。
市こども教育部家庭支援課の林和彦さんが、市内のブドウ農家から「最近は高級ブドウに押されてナイアガラが売れなくなった」という話を聞いたことが、企画のきっかけとなった。塩尻市で栽培される加工用ブドウの約6分の1がナイアガラだが、6年前に比べて生産量は約250トン減少。林さんは「ナイアガラが作られなくなってしまえば、この地域の風景が変わってしまうかもしれない」と危機感を抱いたという。
一昨年の秋ごろ、「南信州ビール」の役員と話す機会があり、リンゴや山ブドウを使った発泡酒を醸造していることを知った。「ナイアガラでも造れる?と軽く聞いたことから、どんどん話が進んでいった」と林さん。昨年1月には同社に出向き、製造することが決まった。その後、市の地域づくりに携わる人たちに声をかけてメンバーを募り、プロジェクトを発足。昨秋、ナイアガラを収穫し、搾汁は同市下西条の農家の女性らでつくる「矢沢加工所」に依頼した。
林さんは今年7月、市が副業をする際の許可基準を明確化したことを受けて、「たのめ企画」を設立した。もともと社会福祉士として2011(平成23)年に入庁。農林課に配属されたことで農業に興味を持ち、畑を借りて野菜栽培を始め、狩猟免許も取得した。「普段は児童相談所とやりとりしながら、子どもや若者、保護者の皆さんの支援をしている。このような形で地域づくりに携わる、ましてや会社を立ち上げて社長になるとは思いもしなかった」と笑顔を見せる。
先行販売にはクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」を利用。開始から5日間で初期目標の160万円を達成し、現在はネクストゴールの280万円を目指している。「予想以上の反応。多くの方の支援に感謝したい」と林さん。今秋は1.5トンのブドウを収穫し、来年1万本近く製造できるように準備を進めている。「コンコードなどほかのブドウでもチャレンジしたいし、いずれは醸造所も開きたい」と意気込む。