売れ残ったパンを無償で配布する取り組み「きのうのパン屋さん」が毎週日曜、塩尻市の吉田東公民館(塩尻市広丘吉田)と中島書店高原通り店(広丘高出)で行われている。
市内のパン店が提供する前日に売れ残ったパンを無償で配布する。日によって量は異なり、売れ残りがなければ配布しない。主催する「みんなの食堂」の中村小太郎さんは「捨てたくないからもらってほしい。みんなで食品ロスを減らしていければ」と話す。
中村さんは東京のITベンチャー企業の経営者だったが、病に倒れて「食と農の大切さ」に気付き、2017(平成29)年、妻の実家がある塩尻に移住。義父の農業を受け継いだ。無農薬、無肥料で、除草剤を使わず育てた「小太郎米」は、一部を市内の小学校に寄付している。「塩尻は自校給食なので子どもたちと接する機会ができ、喜びの声とともに食にまつわる課題も知った」と中村さん。県の有機農業推進プラットフォームの講師を務める一方で、市の「まちづくりチャレンジ補助金」を活用して子どもの貧困や格差・差別問題について学ぶ講演会なども開催。2020年、地域から孤食をなくすことを目指して「みんなの食堂」を立ち上げた。
「きのうのパン屋さん」は、取り組みの一環として1月から開始。パン店で廃棄されてしまう「ロスパン」のことを知って、無償配布したいと申し出た。配布を始めて3カ月。日によっては30分もしないうちになくなることもあるという。
「きのうのパン屋さん」という名前を中村さんは「もらってくれてありがとうという気持ちでやっているので、いろいろと考えて付けた」と説明。訪れた子どもからもらった手紙にあった「助かっています」という言葉が印象に残っているという。「たぶん、親と一緒に書いたのだと思うが、これは大人に責任がある。『助けてもらっている』と、子どもが後ろめたさや恥ずかしさを感じるようなことはしたくない」と力を込める。
今後は「子ども食堂」の実現などに向けて活動を進め、来年度にはNPO法人化も目指す。「やりたいことがたくさんある。地域のため、子どもたちのために、試行錯誤しながらチャレンジしていきたい」とも。
配布は、中島書店高原通り店=9時開始、吉田東公民館=11時開始。配布の有無は土曜夜にSNSなどで知らせる。