「名建築」にアート作品を展示する「マツモト建築芸術祭」が現在、松本市街地の19カ所で開催されている。
「名建築にアートが住み着くマツモトの冬」をテーマに、国内外で活躍する17人のアーティストの作品を展示する。会場は、国宝の旧開智学校校舎をはじめ、国登録有形文化財や県宝、市近代遺産の建物や、特に指定はされていない「名もなき」建物も。「旧宮島肉店」(松本市丸の内)や、「上土シネマ」(大手4)など、ボランティアらが入って会場として使えるようによみがえらせた場所もある。
「割烹(かっぽう) 松本館」(丸の内)の大広間「鳳凰(ほうおう)の間」では、「B-BOY(ブレイクダンサー)」をテーマに制作する小畑多丘さんの彫刻作品を展示。設計・監修を手掛けた松本市出身の彫刻家・太田南海(1888~1959)と2人の彫刻家がコラボした空間に仕上がった。
上部は白壁、下部はスクラッチタイルが施されている「NTT東日本松本大名町ビル」(大手3)では、現代アーティスト・鬼頭健吾さんがカラフルなアクリル板を用いたオブジェを置き、窓一つ一つに布を貼って建物全体を作品にした。夜間はライトアップし、異なる表情を生み出している。
1月29日には、会場の一つでもある「アルモニービアン」(同)で記者発表会が行われた。実行委員長の斉藤忠政扉ホールディングス社長は「松本には素晴らしい建築物がたくさんあるのに壊されてしまうことも多く、何とかしたいと思っていた。建築とアートを組み合わせることで化学反応を起こしたい」とあいさつ。総合プロデューサーを務めるアートディレクター・おおうちおさむさんは、市美術館のロゴデザインを担当した時に初めて松本を訪れたといい、「知れば知るほど、すごいと思えるものがたくさんある」と話した。コロナ禍で初開催となった同イベントについて、「限られた制作期間でも引き受けてくれたアーティスト、会場を貸してくれた皆さん、多くの方の協力がなければできなかった」と、おおうちさんが声を詰まらせる場面も。
会期中には、参加アーティストによるトークイベントや、市内出身のアーティスト・アオイヤマダさんらによるライブパフォーマンスなども予定する。「有名無名を問わず、人の思い、暮らしが宿る建物は価値がある。地域の人と価値観を共有できる期間になれば」とも。
会場は全て入場無料。開館時間などはウェブサイトで確認できる。2月20日まで。