松本市在住の金工作家・守田詠美さんによる個展「CURRY SPOON(カリースプーン)展」が現在、松本・大手の「カレーとおやきの店something tender(サムシングテンダー)」(松本市大手4、TEL 0263-88-8861)で開催されている。
銅を主とした合金の洋白を使ったカトラリーを中心に、約50点を展示する。同展に合わせて制作したカレースプーンは、店主の本橋卓さんとの会話の中で生まれたもの。「本橋さんの『うちのカレーは日本のカレー』という言葉が印象に残った。洋食店にあるようなオーソドックスなものを意識しつつ、口に入れたときに深過ぎず、食べやすいと感じられるスプーンを目指した」。試作品で実際にカレーを食べたり、本橋さんにアドバイスをもらったりしながら、試行錯誤を繰り返した。裏に打刻した「CURRYSPOON」の文字も、持ったときに違和感がないような位置に調整したという。
カレースプーンと同じサイズのフォークのほか、定番で作るデザートスプーンやれんげも用意する。「定番は柄が細くすっきりしているが、最近は幅があるタイプも増やしている。柄の先端から太くしていく際の曲線の具合が難しい」と守田さん。店名に合わせて「いろいろな『サムシング』を」と、打刻で模様を付けたものや、スプーンのサイズに合わせたトレーなど、遊び心を感じるアイテムも並ぶ。
守田さんは富山県出身。大学で金属工芸を学び、2018(平成30)年から本格的に制作活動を開始。同年の「クラフトフェアまつもと」に出展したことがきっかけで、松本に移住して工房を構えた。作品にボリュームがないことを課題と感じていた時期もあったというが、「ある時、『このほうが日本の器には合う』と言われて、これで良いと思えるようになった」と笑顔を見せる。
昨年、東京・西荻窪で開催した個展を知った本橋さんが声を掛け、松本での初個展が実現した。期間中は、購入したスプーンを使って同店のカレーを食べることもできる。「手作りのカトラリーは初めてという人や、購入後に『マイ箸』のように持参してくる人もいる」と本橋さん。
今後は、器に合わせたカトラリーセットを作ってみたいという。「今回のお題はカレーだったが、それに取り組むことで、今後の制作活動につながる『形』が見えた。お題に向き合うことが自身の成長にもつながると感じたので、これからも挑戦を続けたい」とも。
価格はカレースプーン=4,400円、トレー=2,200円~。営業時間は11時~16時。木曜定休。11月30日まで。