東京都市大塩尻高校(塩尻市)の生徒たちが、中東パレスチナの大学生や俳優らと共同制作した演劇作品「壁と壁」を5月1日、オンライン上演する。
総合監督を務める同校探求コース3年・林充希さんが昨年5月、「探究活動」の授業の中で、SDGsに興味を持ち、紛争地域の子どもたちを演劇で支援したいと活動をスタート。「紛争地域として最初に思い浮かんだのがパレスチナだった」という。現地NGOの日本人スタッフらを介して、パレスチナの若者とオンラインで交流するうちに、自身が持つ偏見に気付いた。「危険と隣り合わせで、暗くつらい日々だと思い込んでいたが、暮らしている人たちは明るく、パレスチナに誇りを持っていると知った」と振り返る。
演劇が盛んな国であることも知り、作品を通じてパレスチナの魅力を発信したいと6月にプロジェクトを立ち上げた。同校の演劇部をはじめ、両国で役者チームをつくり、稽古を重ねてきた。林さんは、日本チームの脚本・演出を担当。「進めるうちに、『多くの人に伝えたい』という使命感が強くなっていった。パレスチナの皆さんと同じ目線で取り組んだことで、偏見という『壁』を壊すような作品に仕上がったと思う」と話す。パレスチナチームの監督・脚本を務めたムハンマド・グルーフさんは「同じような世代の若い日本の方たちと知り合い、交流することで、お互いを理解し合える、とても貴重な体験になった」とコメントを寄せる。
作品は約16分。高校生のリュウセイは、父がパレスチナに出張することをきっかけに、友人のユナとダイチと共にパレスチナのことを調べ始める。「壁」に飛び込むことで他の国で生きる「誰か」の意識に乗り移るという特殊な能力を持つユナが、現地で見たこと、感じたことを通じて、3人は「もっとパレスチナのことを多くの人に知ってほしい」と決意する。
当日は、同校からユーチューブを使ってリアルタイムで配信。ほかに、パレスチナとつないでトークショーも行う。「中東諸国は『遠い世界』と思っている人が多いが、オンラインで交流が生まれることを知ってもらいたい。自分たちと同世代の人たちをはじめ、幅広い人に見てもらえれば」と林さん。
上演は16時~。