松本の文化や歴史、街の面白さをテーマにした「本と町を楽しむ雑誌 松本の本」第2号が6月30日、発行された。
3つの特集で構成。「映画館と街」は、松本中劇、東宝セントラルなど今はなくなってしまった映画館に携わってきた人たちへのインタビューや、1950~60年代のチラシから当時の映画に思いを巡らせる。「本をつなぐ人たち」は、鶴林堂書店や東筑摩郡松本町(現松本市)生まれの書店主で編集者の岡茂雄などを紹介。「“ワタクシ テキ マツモト”のススメ」は有志18人が、火の見櫓(やぐら)、鉄塔、こま犬、橋、食文化など、さまざまな視点で思い入れのあるものをつづる。
同誌は昨年4月に創刊。古書店「想雲堂」(松本市大手4)の店主・渡辺宏さんが、地元の魅力を発信しようと、実行委員長を務める「まつもと一箱古本市」の協力を得て取り組みを始めた。「松本の古本市は、他地域と比べて県外から出店する人が多く、どうしてだろうと思っていた。話してみると、参加者のイメージと、自分が思う松本に違いがあると感じ、地元の人の言葉で表現したいと考えるようになった」と振り返る。創刊号は2000部発行し、県内外から好評を得た。
多彩な執筆者は、「店で話を聞いて、文章にしたら面白いと思った人に声を掛けている」と渡辺さん。特集で取り上げた映画館や書店は、街の文化を発信する場所と位置付ける。「街は変化するものなので、少し前の記憶をたどって、振り返りながら、整理して残しておきたいと思った。昔は目的もなく、ふらりと街へ出て、思わぬものと出合うことがたくさんあったが、今は目的もなく出掛ける人が減ってしまった。街に出る人が徐々に少なくなる中、この先10年後、20年後に、何を伝えていけるかを考えながら作っている」
そんな中で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてイベントが中止になり、観光客も地元の人も街から姿を消した。「人がいない場所は街とはいえない。こんな時だからこそ、街の良さを多くの人に知ってほしい」と渡辺さん。今後も、年刊で発行していく予定。「ここを地盤にしている人の視点だからこそ、その土地の空気がにじみ出る。こんなふうにいろいろなことを書ける街はいい。皆が街って面白いと思ってもらえれば」とも。
B5判60ページ、マップ付き。価格は600円。松本市を中心に県内の書店で販売する。