造形作家・木工家具デザイナーの貝山伊文紀さんによる「北欧の器と枝のモノコト展」が現在、松本・中央の北欧ビンテージ食器とデザイン雑貨店「kirsikka(キルシッカ)」(松本市中央1、TEL 0263-88-8208)で開催されている。
スプーンなどのカトラリーやカップ、ネックレス、マグネット、モビールなど約60点を展示。木の枝を用いて制作するため、カトラリーの柄の部分は節があったり、先端の部分はだ円だったり、曲がっていたりと、他にはない個性的な形をしている。樹種はリンゴやモッコク、ナツミカンやハナミズキなどで、「建材や家具に用いる木とは全く違う」と貝山さん。農園や個人宅で枝打ちしたものなどを使っているという。
カトラリーは、同店が扱う、北欧の器に合わせて作ったものも。カップは、シラカバのコブをくりぬいて作る北欧の伝統的なマグカップ「ククサ」をモチーフにしたもので、店主の落合克則さんがリクエストした。
貝山さんは、東京芸術大学大学院を修了して、岐阜・高山の老舗家具メーカーに勤務した後、2012年に「アトリエ灯」を設立。これまで芯があるため使われなかった枝を用いたプロダクトの可能性を探りながらアート作品を手掛け、徐々に細いものから太いものを扱うようになっていったという。「国産の木を使うためにどうするかが最初のテーマだった」と貝山さん。「森の生態系を育てるためには枝打ちが欠かせない。その枝で何かができれば、循環が生まれ持続可能な仕組みができる。今までの木工とは違う新しい価値を見つけることで、森林や里山との関わり方が変わってくるはず」と話す。昨年、安曇野に移住。「学生時代は山岳部だったし、高山に住んでいた時も、東京へ向かう通り道としてなじみがあった。北アルプスの雲の動きが好き」と笑顔を見せる。
落合さんは、東京のギャラリーで貝山さんの作品を見た時のことを、「同じものがないことや、枝が手にフィットする感じが印象に残った」と振り返る。同店ではこれまで、北欧の作品を扱う展示をしていたが、「北欧の器とも合うし、コラボすることで相乗効果が生まれるのでは」と企画した。
8月11日には、トークイベント「枝のモノコト」が行われ、貝山さんが枝を用いる理由や制作過程について紹介した。質疑応答では、リンゴの木の可能性について問われ、「枝打ちしても今は、まきくらいしか活用されていないが、リンゴの枝は緻密で丈夫。いろいろなリンゴを使い分けて作品を作ってみたい」と貝山さん。「日本の森林の環境をどう整えていくかを考えていきたい。長野で暮らしながら長野の森で作ることによって、数年後、少しでも何かが変われば」とも。
価格はスプーン=2,000円~、マグネット=8,000円~など。営業時間は11時~19時。8月27日まで(22日は休み)。