信州大学の学生が飼育しているヤギと共に庭や畑の除草を行う「松本草取り隊」を結成し、活動を始めて半年が過ぎた。
メンバーは、同大医学部3年・椚谷健さんと人文学部3年・長田陸さんの2人。昨年10月に、静岡の牧場で雌のヤギを1匹購入。文化祭で名前を募り「ヒメ」と名付けた。飼育場所も探し、共通の知人を通じて知り合った、自宅でゲストハウスを営む「よこや農園」(松本市岡田下岡田)の川辺謙介さんに依頼。庭にヒメの小屋を作り、毎日通って世話をしている。椚谷さんは「地域のマスコット的な存在になっていて、近所の子どもたちも会いに来てくれる。地域の人たちに支えてもらいながら活動している」と話す。
2人は「何か面白いことをしたい」と、それまではヒッチハイクや野宿をしていたが、「自分たちだけではなく、皆で共有できるような『面白いこと』をしたい」と考えるようになった。昨年6月ごろに、動物を飼うことを決めて、親しみやすさからヤギを選んだ。「せっかくなら懐いてくれる動物がいいと思った」と長田さん。ヒメも「餌をくれる人」と認識して、2人が来ると反応が違うという。
飼い始めてから、近所の人たちと交流が生まれたこともあり、「ヒメと一緒に、人のつながりを生み出すようなことができるのではないか」と思い、今年春ごろから活動をスタート。現在は、同大教授や近所の住民など知り合いからの依頼を受けて、ほかの学生にも声を掛けて草取りを行っている。「その家の子どもたちも一緒に手伝ってくれたり、皆でご飯を食べたりしながら、ちょっとしたイベントのような感じ」と椚谷さん。
草取りは無料で請け負い、依頼場所までは歩いて向かう。あがたの森公園の近くまで、2時間近くかけて行ったこともあるという。「ヒメは『道草を食う』ので、どうしても時間がかかる。一緒に歩いたり、ときどき抱きかかえたりして連れていくが、ヒメへの負担も大きい」と長田さん。活動の場を広げたいと、今月からクラウドファンディングを開始。目標金額は50万円で、バンを購入する資金に充てたいという。
今後は、学生、社会人問わずメンバーを増やしたいと意気込む。「ヒメに癒やされるという人も多い。これからもヒメと一緒に多くの人とつながりをつくっていければ」とも。