松本を舞台にした物語形式のガイドブック「ブックトープ松本」の制作が現在、進んでいる。
同書は街を舞台に、実在する場所や人が登場する短編小説集。場所などはマップで紹介し、ガイドブックとしても活用できる。書き手は街に住む人々。主催する柴田悠紀さんは「街で暮らす人たちに書いてもらうことで、リアルな松本の魅力、フィクションとノンフィクションの間に生まれる面白さが表現できると思った」と話す。
柴田さんは信州大学人文学部芸術コミュニケーション講座(現・芸術コミュニケーション分野)卒で、現在は東京・駒込の「百塔珈琲(コーヒー)Shimofuri店」で店長を務めている。「大学時代を過ごした松本が大好き。観光地としてだけではなく、もっと深い魅力がたくさんあるということを知ってもらいたいとずっと考えていた」。
昨秋、東京・荻窪の「6次元」で行われたイベントに参加し、同店店主のブックディレクター・ナカムラクニオさんが、山形市民と協力して作り上げた小説集「ブックトープ山形」を知った。「この方法なら街の魅力を発信できる。私が同書を読んで、『山形に行きたい』と思ったように、『松本に行きたい』と思ってもらえるような本を作りたい」とナカムラさんに連絡を取り、準備を進めてきた。
3月29日には、書店「栞日(しおりび)」(松本市深志3)で、講師にナカムラさんを迎え、約2時間で小説を書くワークショップが行われた。昼夜2回、合わせて20人以上が参加。まずは自身が書きたいと思うキーワードをいくつも挙げ、それを修飾する語を出して膨らませていく。同じテーブルの人同士の会話もヒントにしながら、タイトルを決めて書き進めた。用意した原稿用紙を黙々と埋めていく人や、タイトルで迷って苦戦する人など、それぞれの様子を見てナカムラさんが助言。最後は、一人ずつタイトルと冒頭部分を紹介した。
昨秋から、全国各地でワークショップを開いているナカムラさん。それぞれの土地のカラーが出るといい、「松本の街には言葉があふれている、ネタの宝庫。自然と都会のバランスが取れていて、松本らしい文化の土壌を感じた」と、完成を楽しみにする。
今後は、同ワークショップに参加した人が書き上げた小説を中心に、地元商店主などが書いたものを加えて一冊の本にまとめる。完成した本は、5月27日・28日にあがたの森公園で行われる「クラフトフェアまつもと」で無料配布する。今月からクラウドファンディングも始めた。「なるべく一緒に楽しんでくれる仲間を増やしたい」と柴田さん。目標額は達成したが、より多くの部数を印刷できるよう、継続して支援を呼び掛ける。