松本市美術館(松本市深志3)で1月28日、トークイベント「もっともっと、松本vol.2草間彌生さんを身近に感じよう」が行われた。主催は、松本市の市民団体「新まつもと物語プロジェクト」。
松本の魅力の発見や発信のアイデア、外国人観光客へのおもてなしについてなどを一緒に考える場として昨年10月からスタートした同企画。2~3カ月に1回、さまざまな分野で活躍する人を招いて話を聞く。今回は、草間彌生さんの魅力について、同館の草間さんの担当学芸員である澁田見彰さんが講師を務め、これまでの作品とともに、生い立ちから渡米後の活躍、そして現在の活動までを丁寧に解説した。
松本で初めて個展を開催した時や、渡米前に松本駅で行われた出発式の写真と合わせて、日本を離れる前に1000枚もの作品を自宅近くの薄川で焼いてしまったというエピソードも紹介。澁田見さんは「自分がいない間に捨てられては嫌だという気持ちと、米国でもっといい作品を描くという決意もあったのだと思う。それでも、中にはご両親がこっそり隠していたものがあり、それが残っている」と話す。
渡米後のインスタレーションや、ハプニング(パフォーマンスアート)、1973年に帰国した後の個展の様子などを振り返りながら、2000年代に入ってからは「描きたいものを描けるようになって、心が晴れてきたのか、作品も明るくなってきたように感じる」と澁田見さん。特に地元の人たちには作品の意図が伝わらない時期もあったとしながらも、「とても苦労されてきた方で、その苦労を作った環境が松本だったかもしれないが、逆にその苦労がなければこのようにはならなかったかもしれない」と話した。「愛すべき故郷だが、複雑な思いもある。でも、松本の皆さんが応援してくださることは本当に心から喜んでいらっしゃる」とも。
質疑応答では、同館で草間さんの作品の展示スペースをもっと増やしてほしいという要望や、もっとオブジェなどを街中に設置できないかといった意見が上がった。「(同館は)市のものなので草間さんだけ、というわけにはいかないが、街中の設置などは故郷の皆さんが望んでいることが伝われば良いと思う」と澁田見さん。「ぜひ声を上げていただければ」との言葉にうなずく人の姿も見られた。