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松本市美術館で「藤松博展」-初の回顧展、油彩・水彩・版画など180点

「ひとがた」シリーズが並ぶ

「ひとがた」シリーズが並ぶ

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 松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-3400)で現在、「光と影の旅人 藤松博展-戦後美術の一断面-」が開催されている。

暗がりで際立つ「旅人」シリーズ

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 藤松博(1922-1996)は長野県生まれ。東京高等師範学校を出て図画の教師として働きながら、無審査・無賞の公募展「読売アンデパンダン展」に出品。静かな中にも社会風刺的意味合いを含んだ作品や海外の新しい美術に触発された作品などを発表し、高く評価された。1959(昭和34)年から2年半、ニューヨークに滞在。その後、「ひとがた」や「旅人」シリーズといった独自のスタイルを生み出す。同展では、油彩・水彩・版画など約180展を展示。生涯を通した画業をたどり、戦後美術の一つの断面にスポットを当てる。

 「ひとがた」シリーズは、ニューヨーク滞在中に「ひと」のイメージを求めて描いた数多くのスケッチから、癖のある線やタッチを消すなどして偶然的な要素を取り去って構成。並べたり、他のモチーフと組み合わせたりした作品が並ぶ。「旅人」シリーズは、西脇順三郎の詩「旅人かへらず」の一節とともに照明を暗くした空間に展示する。「『旅人』が藤松の一つの到達点と捉え、見せ方も工夫した」と同館学芸員の細萱禮子さん。

 9日には版画り師の木村希八さん、多摩美術大学教授で版画家の渡辺達正さん、小川稔同館館長によるスペシャル鼎談会「彫師が語る藤松博の魅力-人と版画-」が行われた。木村さんは作品を交えながら、藤松さんの人柄やストイックさを紹介。「いろいろな試みをしてきた作家。パターン化しているのではなく、一点一点が幅広い要素を持っている。今回の展示であらためて立派だと感じた」と話した。

 「戦後美術が見直される中、もう一度皆さんに知ってほしい作家」と細萱さん。回顧展は今回が初めてで、企画した同館としても力が入る。「作品に至るまでの過程や、さまざまな行跡も見どころ。ぜひ足を運んでいただければ」

 開館時間は9時~17時。入場料は、大人=1,000円、大学生、高校生、70歳以上の松本市民=600円、中学生以下無料。月曜休館。12月1日まで。11月16日・17日・23日・24日はいずれも14時から「ギャラリートーク」を行う。

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